鍋レモン

隠された時間の鍋レモンのレビュー・感想・評価

隠された時間(2016年製作の映画)
5.0
⚪概要とあらすじ
『世界で一番いとしい君へ』などのカン・ドンウォン主演のラブストーリー。

母親が他界し、義父と共に離島に移り住むことになった少女スリン(シン・ウンス)。家にも新しい学校にもなじめずにいる中、ソンミンという少年と出会う。自分と同じように親のいない彼と心を通わせ、次第にスリンはソンミンに好意を抱くようになる。ある日、ソンミンたちと立入禁止区域内にある洞窟に足を踏み入れるが、スリンだけを残して3人の少年が行方不明になってしまう。その後、スリンの前にソンミンを名乗る青年(カン・ドンウォン)が現れる。周囲の大人が彼を警戒し、警察がマークし始めるが...。

⚪キャッチコピーとセリフ
“君だけは僕を信じてくれる?”

「誰も私の話を信じてくれない」

⚪感想
ラブストーリーで始まり、ミステリーになりファンタジーなってラブストーリーに戻る作品。

前半もちょいちょい泣いたけど後半はずっと泣いたし、終わったあともレビューを書いている時も泣いてしまった。

韓国映画観たいなっていう感覚でサラッと観てしまったけど心が死ぬほどやられた。しんどい辛い苦しい無理。これは数日引きずる。

あらすじの内容は1時間くらい経ってからだったので思っていた作品と違った印象があったけど面白かった。

本当のことを言えという大人。
本当のことを言う子供。
信じない大人。
嘘をつく大人。

スリンとソンミンを演じた俳優さんたちの演技力。
吹き替えはスリン、ソンミンともにあまり合っていなく、スリンは子供子供しすぎた声が強すぎたので字幕の方がいい。演技をしている吹き替え。調べたところ春名風花さんだった。

まずカン・ドンウォンが素晴らしい。
演技派の俳優さん。単なるイケメン俳優ではなかった。
『群盗』でもそうだったけど、とにかく表情での演技が上手く、共感しやすい。
実際に心はまだ子供なのに見た目だけが成長してしまったかのような演技で鳥肌モノ。
カン・ドンウォンはたまに荒牧慶彦さんに見える。

子供のソンミンをイ・ヒョジェ、大人のソンミンをカン・ドンウォンが演じているんだけど成長してこうなったんだと感じ取れるほど似ている。目や表情が特に。

スリンを演じたシン・ウンス。
学校では変わり者だと思われ、家では血の繋がりのない父と上手くいかない。そんな時にソンミンと出会い恋に落ちるが、ソンミンは大人になって戻ってくる。かなり複雑な役どころだけどスリンの思いがひしひしと伝わってきた。
オーラが凄い。

終始観ている側はもどかしい。
本当なのに信じて貰えず、更には責め立てる大人たち。
なかなか現実的で胸が痛い。

ファンタジーの部分の描写が美しく、神秘的でありながら、時に残酷で良かった。

現実と非現実の移り変わりは突然であるが違和感がなく自然。

実際にあった事件のように、スリンができごとを語りそれが本になったように見せる斬新な作り。こっちは本当にノンフィクションなのかななんて思ってしまう。

子供の頃のソンミンが前に付き合っていた人の目に似ていたから余計なんか複雑でのめり込んでしまった。

フィルマークスのあらすじだとおかしなミスリードの説明になっているので違うところに載っているあらすじを読んだ方が良いかも。



⚪以下ネタバレ



不思議な卵を割ったことによって止まってしまった世界が美しかった。ある意味宇宙空間のような不思議な世界。
独自の設定があり、特に水分が面白かった。海では足で蹴ると水しぶきは上がるが、船を漕ぐ事はできない。コーラは削るようにして飲めるらしい。また、人や猫が風船のように浮いているようにみえたり、漫画を周りに浮かせ読むシーンが良かった。

細かい描写だと感じたのはソンミンが元の世界に戻ってきた時にスリンのお弁当を空中に置こうとして落としてしまうシーン。実際に宇宙飛行士の方とかは空中に置くのに慣れているから地球に帰ってくるとよくものを空中において落としてしまうっていうのを前に動画で観たことがあったから納得がいった。
他にも止まった世界では音がなかったからか自転車や声に少し怯えるシーンも納得。

不思議な卵を見つけ割ったことで時間の止まった空間に取り残されたソンミンを含む3人。戻れたのは大人になったからなのか。
3人の1人は喘息で死に、もう1人は崖から飛び降り海へ。ソンミンが飛び込んだと気に何故か時が戻る。喘息で亡くなった子は早い段階だったから砂浜に埋めたんだけど、遺体をショッピングモールみたいなところから風船のように運んでいるシーンが印象に残っている。服を家族の元へ届けたのもなんか良かった。
何年っていうのはソンミンの適当に数えたものなので明確には分からなかったけど止まった時間を過ごすのは、最初は楽しくても、すぐ辛く苦しいものだろうなと。しかもソンミンの2回目は1人だし年数も2倍ぐらいあったはず。しかし、スリンを思いながらのその年月は胸に響く。
重要なのはスリンが卵を私も割るって言った時にソンミンがなぜ止めたかなんだよなって思った。もちろんスリンが時を停めれば年齢もソンミンと同じくらいになるだろうにそれを選ばず彼女には幸せに制服を着て過ごして欲しいっていうソンミンの願いが辛い。止まった時間を1人で過ごすスリンのことも考えていたんだろうし。更には自分は誘拐犯で友人を殺した罪まで被ろうと決意をしていたところも。

勝手な解釈だけどスリンや警察を崖の上に助けるのではなく砂浜にしたのは作りの悪さではなくて、卵のことが事実だとわかりスリンが巻き込まれるのをソンミンが避けたかったからじゃないのかな。崖の上だったら落ちたはずなのにおかしいとそこにいたみんなが気づいてしまうもんね。砂浜なら微妙だし。

恐らく時間は宇宙空間まで止まっていて月の満ち欠けはソンミンの勘違いなんじゃないのかな。風とかないっぽい。

全体的な内容の完成度が高いのでツッコミどころとはならないが、時間を止めている間に病気になって死ぬ可能性はあるし、水分も簡単には補給できなそうな。トイレやお風呂はどうしていたんだろうかと。彼らは本を散らかしたり、人々からお金を盗んだり、ご飯を好き勝手食べていたけど時間が動き始めたら結構な事件だと思う。その部分を描いていたら本編の邪魔にはなるが気になるところ。また、私の感覚ではあるけど彼らの離島がそう大きくは見えなかったので5年以上もそこにある食料食べてたら異常に減っているはず。
またソンミンの2回目に時を止めたのは夜だったから、ソンミンは大人から老人になる間夜をずっと過ごしていた訳で、太陽を浴びなくても生きれるのかなとは思った。

私としてはスリンが時を止めてソンミンと同じ歳になって戻り、2人で幸せに暮らしてほしかった。でもそのラストじゃ納得がいかないというか綺麗すぎて。だからこそのソンミンの決意とあやふやなラストがハッピーエンドでもありながらその後や選択肢を考えるとバットエンドで好きだった。

おじいちゃんの話によれば子供から大人まで時が止まるらしかったのに、20歳になっても時は動かず。希望を抱き戻るも家族はそのままで、自分たちの顔は変わってしまっている。時が動けばいいと希望を抱きながら、動いて家族に認識されなかったら。ソンミンは元々父親に捨てられていたけどスリンという存在があったから複雑だったろうなと。
大人から老人っていう話もあったからソンミンの2回目は1回目を超える長さだったのかと想像するとより苦しい。

スリンがソンミンを信じ、髪を切ったり、コーディネートをするシーンが好き。純粋にスリンはソンミンを好きだったソンミンとしてみていて、ソンミンも好きなスリンとしてみていてなんの違和感もなかった。

ソンミンとスリンが告白して、ソンミンのほうが背が小さいから階段で段差をつけてキスの演出が好き。
幽霊召喚の時に高身長とイケメンみたいな願いが叶っていたっぽい?
ソンミンが大人になってからスリンと手を繋ぐ以上のものはなく、多くがスリンから手を繋ぐとかだったので観やすかった。

ソンミンがスリンの姿を彫ったものが小児性愛者として解釈されてしまうのが辛かった。

ラストは本物の可能性もあるし、スリンの見た幻影かもしれない選択肢で良かった。私は本物だと思う。

都合のいい物語があるのならソンミンは元の年齢に戻ってスリンと幸せな時間を過ごして欲しい。もうそれはできないし、ソンミンはスリンの父親ぐらいの年齢に近いだろうしあの後も2人では居れないだろうと思うと切なすぎて。でも2人の思う気持ちは一緒で。しんどい。

以下ストーリー。
児童心理学者の女性が録画を始めスリンの話を聞くシーンからスタート。回想へ。
交通事故で母が亡くなったスリンは再婚相手の父と離島へ。父はトンネルの仕事をし、スリンは学校へ。スリンは幽体離脱や心霊に興味を持ち、周りからは奇妙な目で見られている。そんな時、ソンミンと仲良くなる。幽体離脱の話を聞いたり、幽霊を召喚したり、2人しか知らない言語で交換ノートをしたり。ある時山の奥の秘密基地でスリンはソンミンに彫刻刀で自分の顔を彫ってもらう。しかしその彫ったものは階段の穴へ。ソンミンが取ろうとするも手が届かず腕を怪我してしまう。
ある日スリンはソンミンを含めた3人の男の子と会い立ち入り禁止のトンネルを見に行くことに。トンネルの爆発を待っていると不思議な洞窟を発見する。みんなで中に入るとそこには池の中に光り輝く卵のようなものがあった。ソンミンが泳いでとり外に出る。スリンは母から貰ったピン留めを落としてきたことに気づき取りに戻る。その時トンネル工事の揺れが起き、スリンが急いで洞窟から出ると3人の男の子はいなくなっていた。離島では男の子3人と女の子が行方不明になったと大騒ぎに。その後スリンは発見され、1人の男の子が砂浜に埋められた遺体で見つかる。そんな時、スリンの目の前にソンミンと名乗る男が近づいてくる。最初は叫び声をあげ逃げたスリンであったが、鍵の場所や交換ノート、ソンミンが彫ってくれた木などをきっかけにして本当にソンミンであることに気づく。スリンは秘密基地でソンミンと仲を深めて行くが、一方でスリンの父親や離島の住人は変な男がスリンといると知る。スリンの行動やソンミンがカメラに映っていたことなどからソンミンは誘拐犯にされてしまう。ソンミンは時が止まっていた頃に集めたお金でスリンと逃げようとするも警察に捕まってしまう。洞窟で会おうとソンミンに話し、スリンは隙を見て逃げ洞窟に行く。洞窟には光る卵があり、スリンは手に入れる。スリンはそれを割ることでソンミンを人々に信じさせようとするも、ソンミンはスリンに幸せな日々を過ごして欲しいと願い卵を取り逃げる。しかし、2人は警察に追いつかれてしまう。とうとう捕まると思ったその時、スリンが崖から落ちかける。警察やソンミンが助けようとするも手が届かずスリンは落ちていく。その時何かが割れる音が。スリンは夢の中で波が止まるのをソンミンと手をつなぎながら見ていた。目を覚ますと警察とスリンは浜辺にいて助かっていた。恐らくソンミンが卵を割り助けてくれていたのだった。その後スリンは警察の言割れた通り、犯人に脅されてといった供述をした。
児童心理学者の女性とスリンのシーンへ。この話を本にすると言う。スリンはある紙を渡して載せて欲しいと言う。
時間が経ちスリンはミッション系の学校に進学へ。児童心理学者の女性から本を貰い父と船に乗ろうとするとソンミンのような人影が。降りて確認するももう居なかった。船に乗ると再びソンミンのような人影が。スリンデッキに上がるとそこにはさらに歳を重ねたソンミンが。

⚪鑑賞
GYAO!で鑑賞(字幕)。
鍋レモン

鍋レモン