marimo

ラッカは静かに虐殺されているのmarimoのレビュー・感想・評価

3.9
人は死んだら朽ちて土に還る。
生きてきた間に得た記憶は何も残らない。
魂なんてものは無いと思っている。

ただ仮に魂というものが存在するなら、今、自分の魂が平和な国の肉体にある事をただ感謝するしかない。

対岸の火事。無責任な一視聴者である自分からすれば、危険な地で囚われるジャーナリストが日本人であっても、殺されても、ニュースで流れなくなったら何も残らない。

RBSSの彼らはラッカで育ち、故郷がISに支配されたそれを世界に伝えなくてはならない、そこにあるのは使命なんて簡単なものではなく、絶望に近い感情なのかもしれない。

ISの標的になり、仲間を失い、逃げ続けなければならない。

頭巾で顔を覆われ撃ち抜かれる映像は1つの命を終わらせるにはあまりに呆気ない。
これが現実の死であり何の演出も無い真実。
無修正で流される処刑シーンはフィクションよりも非現実的で目をそらすタイミングすら与えられない。

誰かが世界に訴え続けなければならない。
訴え続けなければ届かなくなってしまうから

失った友を思い出して震えるその手が物語る恐怖の重圧。無意識に寝てしまった彼の手から落ちるスマートフォンが彼の頭蓋を破る銃声のごとく床を鳴らす。
きっと彼は毎日夢の中で殺されて目覚めるのだろう。
その恐怖を私は一生かけても想像すら出来ない。
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