ku

テリー・ギリアムのドン・キホーテのkuのレビュー・感想・評価

3.0
人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ。

ドン・キホーテは頭のおかしい老人と言われたがそうではなくて、彼の見る世界が唯一無二の現実だった。ドン・キホーテの世界は伝播し、息絶えることは無い。多くの役者がドン・キホーテを演じてきた。去年、松本白鸚が彼を演じ上げたことは記憶に新しい。頭がおかしいと笑われた老人の世界は今もなお世界中の人々を魅了する。

独特の世界観が映像化されただけあって衝撃が強く、あの世界観に馴染むまでは頭の中で善と悪が戦うような、終始脳が軋みを上げる。なんの気なしに生きていただけでは見ることのない世界を余すことなく映し出してくれる。
狂った世界かのように思われた。けれど所々原作にも忠実でハビエルがドン・キホーテであると信じてやまないことを否定せず(ただししっかりと狂ったとも思われている)正気に戻ってもらおうとするところが良かった。

ただ一つ物足りないとするなら邦題だろうか。邦題のせいでオチがキレイに収まらなくなってしまった。原題を知ってから観るのとでは大きな違いなのではないかなと。オチが原題に対する解のようなものだと思ったもので。

思い込みは人を生かすことも殺すこともできると。
ku

ku