ロアー

テリー・ギリアムのドン・キホーテのロアーのレビュー・感想・評価

3.5
アダ活スペシャル9作目。
19年間で9回も映画化に挑戦し、失敗し続けて「呪われた企画」とまで言われた映画がようやく完成したそうです。

元々アダム演じるトビー役はジョニデが演じる筈だったため、私も15年以上前から企画は知ってしたし、製作のドキュメンタリーだけが完成?して「ロスト・イン・ラマンチャ」として公開されたのでDVDも持ってはいるんだけど、内容はかなり忘れてるからこの機に観直すことにします。
何度かのキャスト変更のうちには、ジョニデの他にユアンの名も挙がってたそうで2人とも昔からの推しだし、最終的に今プッシュ中のアダムが演じることになったのも、何だか個人的な繋がりを感じる(笑)。3人の作品をほぼ10割に近い9割方観てる者からすると、この中ではやっぱりアダムが1番ハマり役だったと思うので、なるべくしてこうなったんじゃないかと思いました。

とにかくテリー・ギリアムが「ドン・キ・ホーテ」にいかに取り憑かれているかがそのまま描かれていた気がして、とても客観的なフィクションとして観られない映画だった。3.5次元的というか、映画の中の現実の境界線も曖昧だし、現実と映画の境界線すら曖昧に感じられてしまって、まるで白昼夢や永遠と続く鏡の中の鏡の世界みたい。好きか嫌いかで言ったら絶対「好き」。

現実と幻想が入り乱れ、もはや自分が何なのかもわからなくなる中で、でも確かにそこには悲哀や狂気だけじゃなくて、そうなるまで何かに熱心に打ち込んだ者にしか得られない一種の陶酔感や喜びが輝いてたように思えて、何だか羨ましいとすら思った。

今回のアダムの役、最初の嫌なやつっぷりも結構刺さるし、外国語を話すのもめちゃくちゃ刺さるし、歌や踊りは刺さり方が深すぎて笑いました。

最初の白い衣装も似合ってて、そこからどんどん薄汚れて、外見と共にアイデンティティまで見失っていく様が見事だったし、黒の衣装も流石似合ってて素敵だった。

ジョナサン・プライスもすごかった!彼は本当に「ドン・キ・ホーテ」でした。そうとしか言いようがない。

惜しむらくは、私が「ドン・キ・ホーテ」の物語を断片的なエピソードでしか知らなかったこと。物語を読んでから、もう一度観返したい作品でした。
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