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ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結のsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
ピンチの時こそ原点回帰

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ハチャメチャで超面白かった!ヾ(*゚∀゚*)ノ

色々あってマーベルの『GoG」シリーズの監督を降板したジェームズ・ガン監督を、DCフィルムズからまさかのオファー。監督自身が長年原作のファンだったし、明るくグロい作家性とも相性良くて痛快娯楽映画として超楽しかった!


色々あって窮地にあったジェームズ・ガン監督。原点回帰なのか、トロマ魂大炸裂を感じさせるB級感。バカ&グロをポップに見せる手腕と、強烈な風刺や多面的なキャラクター造形は流石の手腕。

エアー版がほぼヒーロー映画だったのに対して、今作はしっかり悪党集団だし、もろに自殺行為な作戦に強制参加。捨て駒同然に扱われるヴィラン達に同情したい気持ちが湧いたり湧かなかったり、観客も引き裂かれてこそスーサイドスクワッド。

CGに頼らず本物にこだわる作風も健在で、冒頭の砂浜シーンはアトランタのスタジオ敷地内にサッカーコート6つ分に及ぶ巨大セットを建造。せっかく作ったのに夜のシーンにしちゃったせいで、広さがイマイチ伝わりづらいのもステキ!バカ&無駄!ヽ(゚∀゚)ノ

マーゴット・ロビー3度目のハーレイ・クイン。もう彼女の代表キャラになった感。真っ赤なドレスにミリタリーブーツのアンバランスさがカッコいい! 海や雨といった濡れ場が多く用意されてるせいで、過去イチずぶ濡れシーンが多いのも特徴的。最終的にあんなずぶ濡れかたするの、正気の沙汰とは思えないけど、そもそも正気の人じゃなかった。
花びらの舞うキュートで狂気の戦闘シーンは、ガン監督自身も開発に参加した日本のゲーム「ロリポップチェーンソー」からインスピレーションを得たとのこと。プレイ画面を見たら確かに似てる!(たった10年前のゲームなのに、グロ描写よりお色気表現の方に引いちゃった。時代と感覚の変化って早えな)


ブラッドスポートはイドリス・エルバの今作への参加が決まってから、彼に合わせてキャラクターを改変。単なる殺し屋ではない、陰のあるキャラがハマる…っていうかイドリス・エルバって毎回こんな役な気がする。親子愛あるのに面と向かうと盛大に罵り合うのサイコーだった。
そんで未来チックな銃火器がイチイチかっこいい!
変身合体超合金!なメカメカしさ&カチカチ組みかわる神経質な動きがステキ!男の子ってこういうの好きでしょ?を体現するギミック満載で面白かった。

ジョン・シナ演じたピースメイカー。平和のためなら大量殺戮も辞さないマキャベリストっちゅーかサイコパス。主人公ブラッドスポートとほぼ同じ能力を持ちながら、全く違う価値観なのが面白い。個人の集合体としての組織と、組織あってこそ個の存在が許されるって価値観のすれ違い。「平和のためなら大量殺人も厭わない」って本末転倒のようで、アメリカの平和観っぽくて面白いし、それをマヌケなキャラ造形で見せちゃうトコにアイロニーを感じる。
あの怪獣のカラーリングがアメリカ国旗ぽく、大勢の人の顔にはりついて自我を奪われてしまう姿も現代社会風刺に見えた。みんな見えない社会システムに操られ自分自身を見失った姿っちゅーか。

ポルカドットマンの悲しすぎる過去。演じたデヴィッド・ダスマルチャンの憂いを帯びた眼差しとバカバカしすぎるコスチューム。〜からの強すぎるチートクラスの能力。過去の呪縛から解放されて、どうにか幸せになって欲しい。see you 来世。

キングシャーク演じたスタローン。とにかく面倒見のいい人で有名だけど、ガン監督がキャリアを絶たれる寸前の作品だったせいか、当然のように今作の出演も快諾。なんならガン監督から出演オファーの電話で「君のために役を書いたんだ。すごく頭が悪い、歩く肉食のサメだよ」と聞かされ「僕をイメージしてそれを書いたの? いいよ、君のためならなんでもやるよ、兄弟」と答えたとか。カッコ良すぎるでしょ。スタローンの聖人エピソードがまた一つ増えた。
ちなみにシャークが読んでた本は、ウィリアム・ジェームズの「宗教的経験の諸相」。ガン監督の出世作「スーパー!」のインスピレーション元となった本だそうで、監督自身のキャリアを振り返るイースターエッグにもなってる。シャークは逆さまにして読んだふりしてたけど、逆さじゃなくても読めたか謎。

出番こそ少なかったけど、キャプテン・ブーメランことジェイ・コートニーはデヴィット・エアー版から引き続きの登場。あっさり頓死しちゃうの悲しい。
あとTDK!アーム・フォール・オフ・ボーイって実在の(?)キャラを元にした映画オリジナルキャラ。調べたら自分の腕を取り外して、バットのように振り回して殴りつけるヒーローで、すごくどうかしてて良かった。映画だと取り外しのキモさより、映像的なバカバカしさが強調されたキャラに改変されててとても好き。

冒頭の白い長髪の囚人サバント。演じてるのはマイケル・ルーカーで「スーパー!」「GoG」のヨンドゥ役でお馴染みのいぶし銀。ジェームズ・ガン映画にこの人あり!といった印象のガン一家イチの漢気溢れる顔コワ。今作だとキャラ反転しちゃう微笑ましさとか、情けなさが可愛い。(お前肉食なんかい!て展開も笑った)
イタチ姿のアイツ。中身は監督の末弟ショーン・ガンらしい。「GoG」のロケット(アライグマ)のスーツアクターもやってたし、クラグリン役としても知られる大きな目が印象的な名脇役。ガン一家をこっそり潜ませるイタズラ心が楽しい。

盟友タイカ・ワイティティも初代ラットキャッチャー役でちょこっと出演。
他にもトロマの社長ロイド・カウフマンがカメオ出演してたり、「悪魔の毒々モンスター」が一瞬映り込んだりとトロマ魂炸裂。GoGのマンティス役ポム・クレメンティエフがカメオ出演してたりと、マーベルとDCの壁を超えたクロスオーバーも楽しかった。


世の中で一番底辺でゴミのように扱われる存在が、実は一番強くなれる可能性を秘めている……って転換の物語でもあって、負け犬大逆転モノとしても最高。窮地で覚醒するわけでなく、必死の努力が実るわけでもない。才能の使い道をちょっと変えるだけで、世界はガラリと変わる。……これって2018年の監督自身のGoG降板騒動が下敷きになってるような?

俯瞰すると虚実の皮膜を超えて友情と愛に溢れた座組みとストーリーに心鷲掴み。作品そのもののバイオレンスとゴア描写とのギャップ含めて忘れ難い。
バラバラなメンバーが家族のような繋がりになる映画は数あれど、リーダーの父権にメンバーが収斂されないのが新鮮。むしろ家父長やマッチョな強さ信仰から距離を置いて、自立した大人同士の信頼関係として描いてるのが良かった。家族つっても親子・兄弟姉妹じゃなくて夫婦やパートナーって感じ。
ワイスピがドムを家長として、ぶん殴りも辞さない超家父長制を敷いてるのと対照的で、同時期にこの二作が公開されてるの含めて面白い。


難を言えば、ハーレークインのポップさに比べて、主人公がどうにも地味だし、乗り越えるべき障壁が分かりにくい。命令とはいえ、あんだけカジュアルに皆殺ししといて土壇場で改心するのは都合良すぎでわ。どんなに悪事を働いても子供殺しより酷いことはない、とぶっ飛ばされるのはあの一連の騒動へのガン監督なりの自戒か。

宇多丸師匠の仰るように「100億円かけて作ったトロマ映画」なので、万人向けではなく、興行的にも苦戦中。だけど、描かれてるバカバカしさや志の高さ。何より底抜けに楽しい映画なのは間違い無いので、劇場で見られるうちにもっかい見たい!


49本目
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