2016年のユイ・ハイポー&キキ・ティエンチー・ユウ監督作品。
中国深圳市にある大芬(ダーフェン)は西洋油絵の複製画を産業としている。そこで20年にわたりゴッホの複製画を描き続けてきた出稼ぎの趙小勇(チャオ・シャオヨン)はアムステルダムでゴッホの原画を観たいという夢を叶えるため動き出す。それは彼自身が職人か芸術家なのかを見極める旅でもあった。
小学校卒という厳しい学歴ながら独学でゴッホの複製画づくりで身を立てたチャオさんに密着。小さな工房を舞台にチャオさん一家が総出で描き続ける様子はまさに家内制手工業そのもので着実にゴッホが"量産"されていく。チャオさんら画工はゴッホを金儲けの手段にしてはいるがとても敬意を抱いている。
酔ったチャオさんが涙ながらに語る自身のコンプレックス、母への複雑な思いからは、ゴッホの原画を観る=本物に触れることへの切実な渇望が伝わってくる。アムステルダムで実際に彼の複製画が売られている場所を訪れたときの様子は切ない。「立派な画廊だと思っていたが土産物店だったのか」
画工の中には複製画をやめてオリジナル作品の創作に活路を見出す者も。チャオさんのような複製画職人は時代遅れになりつつあるのかも。オランダから戻ったチャオさんも独自の作品を描き始める。妻と会話しながら描くその絵は、複製に明け暮れた男が絵筆で自らの人生の尊厳を表現するかのようで感動的。
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