昨年のMOOSICLABで出会った傑作短編、『日本製造』の松本優作監督のデビュー作。製作の順番では『日本製造』よりも今作の方が先とのこと。
秋葉原通り魔事件を背景に、「喪失」を抱えて今を生きる人々を描く群像劇。作品のトーンやテーマこそ『日本製造』に近いけれど、今作は作家性全開の挑戦的なドラマだ。焦点が定まらないストーリー展開には賛否が分かれると思うけれど、映像と音を組み合わせるセンスの良さと、劇中の随所で現れる「嫌味な人たち」の不愉快さで、徐々に映画に引き込まれた。『日本製造』でも感じたけれど、松本監督はチャラい若者を実在感を残しつつ嫌味に映すことが本当に巧い。
映画のラストに観客へ向けて放たれる「お前らは他人の何を知っているのか？」というメッセージもズシンと残る。
今作からエンタメ要素を抽出して濃縮した作品が、次の『日本製造』なのだと思い知らされる、監督の野心が感じられるドラマでした。賛否は分かれると思いますが、気になる方はぜひ。
