王道のロマンポルノかもしれない。一般映画にも結構出てた中川梨絵主演。演劇少女時代と今を交互に描いて焼きボックリに火が付く見事にベタな映画だ。

• #恍惚の朝
• #中川梨絵

学生時代の交際相手（田村健）と再会を果たした副社長夫人（中川梨絵）が、過去との惜別を迫られる。心的な繋がりを渇望する女性の自己実現を描いている、日活ロマンポルノ。

本作のヒロインは、元交際相手と現在の夫（高橋明）による、2度の裏切りを体験しているため、「男の傀儡でしかないこと」を実感している立ち位置。60年代にフラッシュバックする手法が斬新だが、見た目の変化が足りないため、タイムスリップ感覚は弱い。

学生特有のテンションで繰り広げられる恋愛模様を、大人になると忘れてしまう儚さ。著者自身は、異性との交際とは無縁の学生時代を送っていたので、感情移入が困難だけども、「あの頃に戻れないこと」への胸騒ぎには同調することができる。

ダウナーな映像を淡々と鑑賞している時間が長く、地味な印象を受けるが、女性の「Let it go」（流れに沿って突き進むしかない！）に着地する王道ストーリーが、バッチリ決まっている。

• #エロ映画

加藤彰は過去と折り合いをつけたり決着を目指して進んでいくような定番の物語には興味がない。ただ過去があり今がある。犯した過去と道連れに生きていくしかないという達観、孤独と悲哀、加藤彰の映画は誰にも寄り添わない（だから素晴らしい）。女性が無理やり挿入されるくだりで窓ガラスに穴が開く、部屋を出ていく際には二階の窓から花瓶を落として割る、台詞や行動ではなくビジュアルでフィルムに傷を残していく、これが加藤彰。