砂

希望のかなたの砂のレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
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カウリスマキによる、難民三部作の二作目。
今回は中東からの難民問題を主題とした作品であり、いつものカウリスマキらしく普通の人々の人生が交錯するドラマである。

映画に登場するのは普段通りの冴えない人々、生活、色、風景、パンフォーカス、生活音、音楽、車、酒、タバコ、犬…であり、さらに2017年の作品とは思えないような35mmフィルムの粗い映像。
一発でカウリスマキだなとわかる作風だ。

別居から諸々を経てレストランオーナーとなりうだつの上がらない面々と商売をすることになるヴィクストロムが、シリアでの内戦から紆余曲折を経てフィンランドにたどり着いたカーリドを成り行きにより雇い入れることとなる。

説明的な描写がないので具体的な時間経過は測りにくいが、売上を伸ばそうと様々な創意工夫をするなかで、色々間違った寿司屋事業に手を広げたり(シャリよりデカいワサビは強烈だ)少しずつ他の従業員たちとの絆を深めていく。
この辺りはユーモラスであり、特に日本人にはなんだこりゃと楽しく観られる。
だが本作に暗い影を落とすのはネオナチとシリアで起きている紛争である。
シニカルを覚える面接、送還命令の下りを経て、さらにネオナチによる攻撃が幾度も挿入される。

物語の核として、人の善意や受容することが本作にはある。入り乱れるほどの様々な言語や集団の壁を越えて個々の人が実行する様々な親切に対して、前記の排外は容赦なく行われてしまう。最後も含みを持たせた終わりであり、不明確にすることで現在も現実において続いている事実であることを思わせる。

分断が続く世界において、根元的な人と人との繋がりがもたらすものをカウリスマキは対抗の手段として提示しているという印象を受けた。
三部作、ということだが次はどうなるのだろうか。
砂