カポERROR

すばらしき映画音楽たちのカポERRORのネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき映画音楽たち(2016年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

映画音楽と言えば、ジョン・ウィリアムズやハンス・ジマーを初めとした作曲家たちの天才っぷりに目が行きがちだが、実は私がこの作品の中で最も衝撃を受けたのは、オーケストラのスタジオミュージシャンたちの驚異的なスキルだった。

以下、本編開始56分33秒より引用。
バーバンク ワーナー・ブラザーズ・スタジオにて。
映画音楽作曲家のジョン・デブ二ーが、スタジオマネージャーの女性から紹介され、指揮者として登壇すると、初対面のオーケストラの面々を前にこう切り出す。
「おはよう。最初は5M1 V1から。弾いてみよう。」
彼はおもむろにタクトを振り上げ…振り下ろす。
オーケストラは、即座に緊張感溢れるアクション映画のクライマックス楽曲を、寸分の狂いもなく完璧に奏で、ピタリと締めた。
その間、僅か55秒。
ジョン・デブリーは「いいね」と満足気。
そしてナレーション。
「スタジオミュージシャンは楽譜を初見で演奏する。何日練習しているか監督たちに聞かれて、『1度もしてない』と答えると、皆ものすごく驚くんだ。」
…いや、そりゃ驚くわ!!!

どうやら、映画製作費が肥大化している昨今、製作会社上層部が楽団契約時間を制限しコストダウンを強行しているらしく、何回も録り直しが出来ない事情も見え隠れする。
そんなミスの許されない状況下で、楽譜初見でもパーフェクトな演奏を披露するパフォーマーたちの超人的なアビリティーにはただただ脱帽である。

最近では、デジタル楽曲しか使わない作曲家も台頭してきており、映画音楽の世界も大きな転換期を迎えているが、個人的にはあの演奏のプロフェッショナルたちの居場所だけは残しておいて欲しいと切に願う。
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