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女と男の観覧車のbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

女と男の観覧車(2017年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ウディ・アレンは本当、この手の痛々しい女を皮肉たっぷりに描かせたら天才。ケイト・ウィンスレットの演技も完璧。全体的にキャスティングが見事で、特にジャスティン・ティンバーレイクの使い方は非常に上手い。

主人公のジニーは元女優で、今は息子を抱え生活のためにサエない夫と再婚してしがないウエイトレスとして働く日々。そんな彼女が若い男と不倫関係になる話。ジニーの「自分の居場所はここじゃない」「自分は才能にあふれている」「自分は美しく魅力的である」という傲慢な思い込みが、不倫によってどんどん増長していく。しかし彼女はそれらの思い込みが本当はもう正しくないことを、心のどこかではわかっている。現実から目を逸らして生きているだけなのだ。だからこそ、若い女がそのすべてを奪っていく段になり、彼女はある種の狂気ともいえる精神状態になっていく。男をつなぎとめるために必死になり、女優時代の派手なドレスを身にまとって厚化粧をする彼女のなんと哀れで醜いことか。男に貢ぐために夫の金を盗むし、若い女に危険が迫っていても見て見ぬふりをするし、そんなだから息子は非行に走るし。

スタートの時点でも鬱屈した不満を抱え込んでいる彼女だが、話が進むに連れてあまりにも愚かに転落していく。そしてラスト、何もかもが冒頭の状況に戻って終わるのがなんとも皮肉なのである。結局彼女は、観覧車のようにぐるっと一周して元の場所に戻って来ただけ。

1950年代の遊園地を舞台にしており映像がとても綺麗。光の使い方も本当に素晴らしい。そしてその演出がまた、話の残酷さを際立たせている。この手の映画は本当にドストライク。たまらない気持ちになった。

しかし邦題のダサさは何とかならないものかね。
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