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空のハシゴ: ツァイ・グオチャンの夜空のアートのdalichokoのレビュー・感想・評価

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国立新美術館で開催されている「宇宙遊」という企画に合致するような映画で、この短い時間に蔡國強の強さを寛大さを見事に詰め込んでいると思う。この映画を見て思うことはふたつ。

彼がこの壮大なプロジェクトを進めるために、ブランティアを含むとてつもない”労働”が集結されているということ。”労働”は時として”雇用”と読み替えることができるだろうか。かつてクリムトが実践した「その場所を包み込む」という作品にもつながる壮大な計画には、我々が想像することもできないような途方もない人たちの努力があって成り立っているということだと思う。

そしてもうひとつは、蔡國強のイマジネーションには制限がないということ。彼は次々に途轍もないスケールの作品を世に放つ。そしてこの映画では、最後に宇宙に向かって梯子をかける。夜明け前に放たれた爆竹の連鎖は宇宙まで届こうとして夜が明ける。とても印象的だったのは、彼の妻が慟哭するシーンで、彼女は蔡國強の理解者でもありファンでもあるだろうが、彼女がプロジェクトを終えた蔡國強を横にむせ返るように泣き続けるのだ。それを笑顔で何事もなかったようにねぎらう蔡國強のスケール。彼は彼の持つイマジネーションを膨大な資本と人を動かしがして実現して、何もなかったようにはしゃいでいるのである。

映画の途中で彼のことを語る中に「蔡國強は作品に成功も失敗もないと言っている。」というセリフがあるが、まさに彼にとってはその瞬間、爆竹が弾けるような瞬間だけが存在であって、その前もその後も何もない、何も残らないということに意義を示しているように感じさせた。

蔡國強の凄さも圧倒的だが、映画としても見応えのある作りだったと思う。
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