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JUNK HEADのあのレビュー・感想・評価

JUNK HEAD(2017年製作の映画)
3.8
 たとえお金が無かろうと、たとえ人手が無かろうと、たとえ経験が無かろうと、およそ7年もの間作品に対して絶えず情熱を注ぎ込み、遂にはSF映画をストップモーションで作ってしまいました。まずは何よりも、狂気すら感じる堀貴秀さんのそのクリエイター精神に敬意を表します。

 キモさと可愛さの塩梅が絶妙なキャラクター達と、それらが作るサイバーパンク感の漂う独自の世界観は、北米で熱狂的な支持を受け、「伝説のカルトムービー」といった触れ込みで日本に逆輸入されることとなりました。しかし、カルトムービーという言葉にびびって肩肘張って見に行く必要はありません。え!そんなベタな!?と思うくらいわかりやすく盛り上がる展開もあり、万人が楽しめるエンターテイメント性も備えているのです。

 不満点を挙げるとするならば、作中世界の背景をセリフで説明してしまっている部分が多いのは、ストップモーションという表現方法をとっていることを考えると勿体無いように思えます。それでも、日本語に聞こえて笑ってしまうセリフや、真似して言いたくなるような語感のセリフなど、セリフ劇的な面白さの部分が、キャラクターの愛着とカルト的人気につながっていることも確かでしょう。

 また、新型ウイルスの流行による人類の危機、バーチャルでダンス講師をしながら毎日のルーチンをこなし、日々の生活を無意味に消費する主人公といった背景は、奇しくも現在の現実世界と全く重なります。主人公が地下世界で何体(?)ものマリガンと関わり合いながら、死と隣り合わせの体験をすることで「生」を実感する場面は、今の我々だから響くものがあります。

 最後に、既に見た人も、まだ見てない人も、是非パンフレットを買ってください!今作のパンフレット最大の特徴は、やはり自作であること。故にレイアウトがナンセンスで正直見づらい感じもしますが、作品や撮影について、ここまで作り手の主観的な言葉が聞けるのは珍しいことです。パンフレットの隅々まで、監督の作品と表現に対する愛が溢れています。そしてなによりも、このパンフレットの売り上げが、続編を作るための資金援助になるのだから!!

 狭い制作現場からから生まれた深く広い世界観が見る人を中毒にさせ、シンプルで熱い展開が多くの人を楽しませる、入りやすくてハマりやすい傑作!!見逃すなんてもったいない!今すぐ劇場へ、ダンボーーーーーー!!!
あ