持て余す

ハッピー・デス・デイの持て余すのネタバレレビュー・内容・結末

ハッピー・デス・デイ(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ホラーかと思ったらループもののSFサスペンスだった(これはネタバレか?)よ。

この手のループする物語は、日本の漫画やアニメが手を替え品を替えで食べ尽くした感はあるけれど、ここにスラッシャーを組み合わせたのは新しい(知らないだけで前例が幾つもあるのかもしれないけれど)化学反応として面白かった。

新味だけではなくて、テンポの良さとキャラクターの魅力でぐいぐい引き込まれる。主人公──ツリーが典型的なホラーの殺され役というのはやはりホラー映画の“ベタ”を意識した感じがあるし、おバカさんぽいのに状況に順応し打開しようともがくところに成長物語の要素も付加されるという巧みさを感じる。

「起きる予定のこと」が少しずつ変化していく過程は、それだけで惹きとしては大きくて、パターンをプチプチと潰していくのが楽しい。ツリーが陽キャでパリピでビッチ(見ているとこの主人公そこまで性的に奔放じゃないように感じる)という属性なので、全体に明るい。謎のマスクをかぶった殺人鬼に何度も何度も殺される割には悲壮感が少なくて、とても見やすい。

かねがね思っているのだけど、SFにしてもサスペンスにしても、作り手もファンもジャンル愛がとても強い人間が多くて、それはジャンルの深化に寄与してはいる。ただ、その愛好家たちはしばしばライトユーザーや入門者を軽視したり、場合によっては拒絶したりする。結果、ジャンルは硬化し縮小してしまう傾向にある。

これストーカーの「愛情」と同じで、百害あって一理ぐらいしかない。それなのに、残念なことに作り手がそのストーカーの方しか向かなくなってしまうことがある。そこから異形とも言うべき作品が生まれることもある(これが一理の希有な部分だと思う)けれど、入門者も楽しめる作品をもっともっと大切にして欲しい。

この映画はそうしたジャンルものの入門者であってもとっつきやすいし、仮面の中が誰なのかというフーダニットとしてもよくできていると思う。ループもののSFとしては、最後まで現象の理由が不明なのが難だけれど、続編でその辺が料理されているかもしれないのでひとまず保留。

確信のない中で、犯人を解明して殺されるのを塞ぎさえすれば、ループが解消されると信じるのはツリーにしてみればなかなかタフな状況だと思う。それでも頑張って正解と思われる手順を踏んだ周回から目覚めた際に、まったく解決されていなかったと知ったときの絶望はいかばかりかと思う。カーターという良き協力者がいたとて、どうして挫けないか不思議なくらいだ。

次作は毎朝、ツリーとカーターに気まずい思いをさせにきたライアンに焦点が当たるようだけど、棚上げされている謎がどう解消されるかとても楽しみ。
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