MasaichiYaguchi

クワイエット・プレイスのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
3.7
映画が始まると同時に観客も登場人物たち同様に極限状況に追い込まれてしまう。
何故ならそこは、ポスターやチラシのキャッチコピーである「音を立てたら、即死。」の世界。
だから我々は、音に敏感に反応する〝何か〟をやり過ごす為、終幕まで手に汗握りながら息を潜めているしかない。
この作品の世界観は、「生き残るのは誰?」というサバイバルシュミレーションゲームに近いものを感じる。
だからゲーム・プレイヤーである登場人物たちは、生き残る為に「ここまでやるか!」というくらい細心の注意を払って音を立てないようにする。
自分の日常を振り返ってみれば、音を立てないことが如何に不可能に近いことか分かると思う。
「出物腫れ物所嫌わず」というようにゲップやおなら、しゃっくり等の生理現象、病状としてのクシャミやセキ、寝ている時のイビキや歯軋り、寝言だって駄目という過酷な状況に置かれることになる。
だから静寂が支配する映画の中でたまに大きな音がすると、ビクッとしてしまう。
本作は秀逸なシュミレーションのサバイバルホラーだが、時にエモーショナルになるのは、映画の中心に家族の絆があるからだと思う。
時に過酷な状況下でギクシャクし、バラバラになりそうになっても、お互いを守りたいという思いが彼らを結束させる。
低予算の映画ながら全米で大ヒットしたのは、斬新な設定と最後までピーンと張り詰めていて緊張が緩まないストーリー展開にあると思うが、エミリー・ブラントが主演し、その夫であるジョン・クラシンスキーが監督・脚本を担当し、更に映画でも夫リー役を演じるという二人三脚をしているところも大きいと思う。
音が重要なモチーフになっている本作で、聴覚障害の娘リーガンを、同様の障害を持つミリセント・シモンズが演じていて、作品にリアリティと深みを与えている。
果たして〝音〟を巡る生存を懸けた戦いはどのような結末を迎えるのか?
本作は大ヒットによって続編の制作が決まっているとのことだが、次は何が来て、どのようなことが起こるのか今から楽しみだ!