トガシパンダ

四月の永い夢のトガシパンダのレビュー・感想・評価

四月の永い夢(2017年製作の映画)
3.9
「大切なものは目に見えない」とは“星の王子さま”の有名な一文であることはさることながら、目からの情報に90%依存する人間には意識しないと難しいことだなと思う。

渡さなかった手紙、言えなかった一言、送信ボタンを押さずに消したライン、伝えたかったのに伝えないことにした物事全て。相手の心に確信を与えて何かが変わってしまうのが怖いし、伝えた時点で言葉にできなかったものが削ぎ取られて無かったことになるのも怖い。ともあれ、伝えなかったものは純度の高いその人の本心だったりする。幸せを願うが故に伝えないことを選ぶこともある。相手がその光の中を振り返らずに歩けるように。

だから、人生って目に見えるものは実際半分くらい。いや3割くらいしかないし、残りの7割が本当に大切なものなのかもしれないなと思う。ここで“星の王子さま”の一文が真意であったと気づく。

この映画は初海さんの纏うそんな残りの7割を間や音楽や表情を持って表現するのが上手い。プロローグからのクレジット、エピローグの入り方も最上に良い。4月ではなく、四月なことも。

忘れて幸せになってください、と言うくせに忘れてほしくないの。桜咲くたびに思い出しちゃうよ。でも季節は必ず移ろいゆく。永い夢は醒めた。大丈夫、忘れる訳じゃないよ。心の中にはいつも桜の花弁が舞う。四月の日差しに絆される。