作品全体の印象は、ストーリーの割にはほっこりという感じ。
前半は、ゆっくり流れる時間を背景に主人公初海の人物像や初海を取り巻く環境、そして少し変化を見せ始めた初海の生活を丁寧に描写している。これが、後半に活きてくるのだが、その副作用として前半は、ちょっと退屈に感じてしまう観客もいると思う。話は少し逸れますが、朝倉あきさんの透明感ある演技が初海の人物像を観る者に植え付けるのに大きな影響を与えているのは言わずもがなです。
一方、事前情報として知らされていたあらすじの「恋人を失くした喪失感」だけでは説明できない初海の言動に違和感を持ちながら観続けていたが、ラストシーンまで観終えると、「なるほど」となる。ただ、本作品は、もう少し明確な説明をして欲しい部分が敢えてあからさまになっておらず、観客により受け止めが結構変わり、それ故に作品の評価も変わる気がした。
ラスト近くの恋人の母親の言葉に主人公は救われたが、多くの観客も救われるかもしれない。