オトマイム

さようなら、コダクロームのオトマイムのレビュー・感想・評価

さようなら、コダクローム(2017年製作の映画)
3.9
タイトルにピッと引っかかりました。
かつてのフィルムカメラ愛好者、ひいてはアナログを愛する人々の心を鷲掴みにする郷愁、その着眼点が素晴らしいと思う。

本作は、コダック社が2010年にコダクローム(ポジフィルム)の生産を中止、カンザスにある最後の現像所もその現像受付を中止したという事実に基づき脚本が書かれている。(コダクロームについては最後に)

余命わずかなカメラマン、ベンと、ずっと絶縁状態だった息子、付き添い看護士、この3人のロードムービー。目的は古い未現像フィルムをカンザスの現像所に最終受付日までに出しに行くこと。

デジカメよりフィルムカメラ、カーナビより地図、CDよりレコード、そんなアナログ人間は今時どれほどいるだろうか?ベンは徹底したアナログ主義だ。なぜデジタルで撮らない?という息子の問いに答える彼の言葉はたいへん説得力がある。カーナビに従って高速道路を運転しようとする息子に、下道の景色を楽しまないのか?地図というものがあるのにと呆れたように言い放つ。
マイノリティ(この場合オタク)のツボにギュルルとねじをねじ込んで、切なくも温かい気持ちにさせてくれる。正直展開はベタなんだけど途中からまんまと胸がいっぱいになってしまった。

私はふだんデジタル化の恩恵を享受しているけれど、それ一辺倒では寂しいなという気持ちもある。アナログの良さを楽しむ余裕を持ち続けたいと思う。丁寧にコーヒーを手でいれるとか、ね(ت)♪
しかしエド・ハリス。渋い不良のおじいちゃん、かっこいいなぁ〜〜


☆彡 ☆彡 ☆彡


20年くらい前?までの一眼レフカメラ好きならば耳にしたことがあるであろう、コダクロームやフジクロームといったポジフィルム。一般的に主流だったネガフィルムよりも微妙な露出テクニックが必要なぶん繊細な表現ができるし色の美しさが違う。昔背伸びして使いました。フィルムカメラの衰退で生産量は減少の一途を辿り遂には生産・出荷停止に。
コスパや手軽さが比較にならない程進歩したデジタル映像には出せない味がフィルムにはある。この映画はその残像を大切に焼き付けてくれたように思えた。

たしかに劇場公開しても採算が取れなさそうな作品ではあるが、Netflixだけの配信では寂しい。鑑賞できる機会が広がることを望みます*:.。.*