シュローダー

劇場版 フリクリ オルタナのシュローダーのレビュー・感想・評価

劇場版 フリクリ オルタナ(2018年製作の映画)
4.0
OVAは完全に未見。全くの門外漢で臨んだ自分ですが、予想以上に楽しく、痛く、辛くも爽やかな文字通りの「青春映画」としては、文句のない一作だった。"普通"の女子高生 カナブンこと、河本カナ 彼女は友人達と何の変哲もない日常を謳歌していた。ある日、宇宙から飛来したピンと、宇宙警察を名乗る謎の女性ハルハラハル子の来襲によって、彼女たちの日常と青春は揺らぎ出して行く。そして、突如出現した巨大アイロンに立ち向かう事となる…
まず、この映画はOVA版の完全な続編であり、僕の様にOVA版を全く観ずに劇場に向かうのは出来る事なら避けた方が良い。何故なら、特にハルハラハル子関連のキャラ説明は殆ど為されない為、ノイズを来す可能性がある。だが、仮に予習をした場合にも、旧来からのファンの間に広がっているこの作品への不評という問題に直面する可能性も捨てきれない。だが、僕としてはこの作品は嫌いになれない。まず、門外漢ならではの視点として、今作から入れ込まれた要素を、旧来のファンが持つある種の色眼鏡なしで受け入れる事が出来た。個人的にこちら側の予想を超えてきた所は、「苦さ」を抱えた青春物であった所だ。つまり、何もかもが普通な主人公河本カナと、その友人達の関係性の変容が、丁寧に描かれる。そして、それらがきちんと積み重なってからのあの無茶苦茶なクライマックスへと昇華していく。その為の135分という長尺であるが、この様にきちんと理由がある長尺ならば全く文句が無い。そして、特に胸を打たれたのは5話と最終話であろう。河本カナとペッツこと辺田友美 この2人の関係性が結実する5話 あのラストのダークで意地悪な着地には惚れ惚れする。そして最終話 それまで何でもないと思っていたある"小道具"の使い方には虚を突かれ、ウルっと来てしまった。ラストの円環構造的な着地も、彼女のイヤホンがどうなっているか を考えれば、ベタながら気が利いている。次に本作を観る時はきちんとOVAも観ます。そして、次に公開されるプログレにも足を運ぼうと思う。作画も素晴らしかったし、ビターでスイートなストーリーも好き。かなり満足出来た一作。