Pigspearls

フジコ・ヘミングの時間のPigspearlsのレビュー・感想・評価

フジコ・ヘミングの時間(2018年製作の映画)
4.5
フジコヘミング、90年代のメディアとマーケットに消費されてきた印象のある名前。
しかし先入観を捨てて観て本当によかった。

世界を駆け巡るキュートなフジコさん。パリで、下北沢で、ベルリンで、京都で、それぞれのお気に入りの家で、ピアノを弾く。練習と移動と公演とまた練習と。その合間のふとした言葉が心にすんと響く、ニクい編集。センチメンタルっていいじゃない。という彼女の凛とした声がずっと残っています。

地上波向けの番組製作が心残りで、夫婦で貯金を切り崩してこの映画を撮ったという監督のエピソードも納得の、撮られる必然がバシバシ伝わってくる、ドキュメンタリーでした。人生に何度かのどん底があって、すべてを受け容れて、いまはたまに天使がこちらを振り向いて、家には猫と犬が待っている。夫も子供もいない、マネージャーも携帯もPCもない。けれどとても豊かな心で、人に恋し、きれいなものを愛し、ときめいて生きぬくということ。