Kuuta

トップガン マーヴェリックのKuutaのレビュー・感想・評価

4.0
▽訓練に意味がある
訓練を「実戦に向けた演習」にした事で前作の難点を大幅に改善している。

前作は「訓練を成績一位で突破できるか」というぼんやりとした目標があり、卒業式の最中に招集がかかる。訓練と実戦の内容に結び付きが無いため、本番で一緒に戦う仲間に思い入れるのが難しかった。

今作は、ある作戦に向けた訓練の過程で、隊員の軋轢や成長が描かれるので、ドラマと実戦でのチームワークが直結している。

また、練習シーンを繰り返す事で、見る側も地形や高低差が自然と頭に入り、最後のドッグファイトが見やすくなっている。ここも大きな改善点だ。

▽先頭に立つ責任
父の亡霊や憧れの女性を「追いかけた」前作に対し、今回は「追われる重圧」「先頭に立ち続ける責任」を描いている。

「まだ今日ではない」「海軍にはマーヴェリックが必要だ」といったセリフは、廃れゆく戦闘機=映画界におけるトムの姿と重ねることが出来る。アイスマンが、迷いを口にするマーヴェリックを説得する場面がアツい。ヴァル・キルマーほんと良かった。
(近年のトムの映画は、ほぼほぼこうしたメタ視点が含まれている印象)

前作のマーヴェリックの役割は、父を亡くしたルースターや自信過剰なハングマンら、若手のパイロットに分散されている(バーで教官と知らずに声をかける下り、前作と立場が真逆に)。

マーヴェリックを追うように、教え子が飛行機に乗り、伝説のスターからアメリカ映画の伝統を引き継ぐ。ビリヤードは「ハスラー2」オマージュだろうなと思っていたら…。

▽世代を超えた連帯
終盤はそうした予想すら一瞬超えてきて、泣きそうになった。

マーヴェリックが先頭を飛び、山を越えた先。ミサイルが乱れ飛ぶ中、4機が自在に位置を変えて声を掛ける。互いに「追い」「追われ」ながら窮地を切り抜けていく。

世代に関係なく背中を預け合い、未来を切り開く。トムが一方的に指南するのではなく、互いに触発し、励まし合う。そんな嘘みたいな奇跡がアクションとして表現されている。こんな大事なメッセージを、ここまで面白く描けるとは。ここは本当に圧倒された。

(余談だが、正直ウネウネ動くミサイルを戦闘機が謎回転でかわしているだけで、涙が出てきてしまう部分もある。

子どもの頃から刷り込まれた板野サーカスが原因で、そういうスイッチを入れる力が、このシーンにはあった。トップガン世代ではない私としては、マクロス、エースコンバット、アーマードコアといった、自分の親しんできた「ミサイル回避もの」の記憶がかなり呼び起こされた)

▽その他いろいろ
・ミサイルの雨を突破した時点で感動マックスだったので、そこからの一悶着はちょっと距離を置いて見てしまった。 F14が主翼を広げるフェティシズムも分かる。分かるけれど、そういうのはもうちょっと抑えようぜと自分の理性が叫んでいた。

・最新鋭機の変態機動をスローモーションで見せるのはお約束だけど楽しい。何故かマクロスゼロの第1話が頭をよぎった。

・窓から逃げる姿を見られる場面など、良い歳して何やってるんだという視点が程よく入っている。水を飲むシュールさが前作から引き継がれてて笑った。かなり荒唐無稽な話なので、冒頭の事故で既に死んでいて後は妄想、という見方もできるとは思う

・オープニングの完全再現はおじさん接待過ぎて個人的には微妙。洗練されてはいるが、前作の過剰な色味の方が好みだった。

・あのバーは行きたくない、怖い

・フレームの外、この映画が終わったとしても俺は飛び続ける、と念押しされるエンドロール直前。最後の一文は泣くわそりゃ
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