おーもり

トップガン マーヴェリックのおーもりのレビュー・感想・評価

4.2
最高の映画だった。本作を楽しみにしてきた昔からのファン、映画好き、初めてトップガンに触れる人、みんなの求めているものを120%で応えてくれた。全ては映画に貢献してきたある漢の物語。

壮年になり、教官の立場になったマーベリック。明らかにトム・クルーズから若者への継承を意識している。
前作と同じく象徴的なオープニング。時を超え、世代を超えて繋がっていく想い。
時代が変われど、変わらない若者たちの青春。それを見つめるマーベリックと、前作を知っている観客。
前作で男臭く暑苦しい部分も、今の価値観に合わせアップデートしている。
敵は抽象化されて、無人兵器みたいなAIと戦っているようで人間味を感じさせず、米軍最強音頭を取らないようにぼんやりされている。

トムクルーズ主演だもの「俺が最強」なんだが、それだけになり過ぎない絶妙なバランスがいい。
今作は特にトム・クルーズが、自身の役者人生の引退を見据えているようにみえた。
来るその時に備え、では今、自分には何ができるのか?を示した作品に思える。
全ての伝説も英雄譚も、いづれ過ぎ去っていく。だけど「俺たちはやれるんだ」。それを証明しきった我らがキャプテン。その背中を見て立ち止まるなってことなのか。
本編開始前のミッション・インポッシブルの予告も相まって感慨深い。

マーベリックがその身をもって提示した可能性。そのシーンこそ本作のクライマックスだ。
ミッション本番はそれほど重要ではない。彼らが何を成し遂げることが、本当のハッピーエンドなのか。
それをきちんと理解し、一切の無駄なく131分に詰め込んだ製作陣に感謝。

最新鋭機のトンデモ空中性能におののきつつやいのやいの掛け合いをして立ち向かう。コントのような戦闘機強奪から、ここにきてちょっとコメディ色を入れ込んで来るのも絶妙。
前作から楽しみしてきたファン、トム・クルーズが好きな人、映画を愛している人々に向けたボーナスタイムという位置づけなんだろう。
旧世代機が最新鋭機に、経験と技量で勝る。スペックでは測れない戦いの決着。
そりゃ大好きな展開だけど、トム・クルーズというレジェンドが、今、これをスクリーンでやる所に何重にも意味が含まれてしまうよ。

トム・クルーズだけを神格化して彼の功績にして称えたくもなるが、実際には映画は1人では作れない。
彼のビジョン、立ち位置を制作陣がすべて理解し、リスペクトして作られたのだろう。
それを踏まえてもう一度この映画の出来栄えを考えると涙がでそう。
いまから、今後のミッション・インポッシブルに向けて気持ちを整えておかないとまずい気がしてきた。