ハリウッド映画が、そしてハリウッド映画を上映する世界中の映画館が、 未曾有の危機に陥った2020年。公開延期が告げられた数多くの映画のなかに そのタイトルを見つけて、思わず天を仰いだ映画ファンも多かっただろう。
『トップガン マーヴェリック』。かつて 日本中を熱狂させて、若かりし日の トム・クルーズをトップスターへと押し上げた、ハリウッド映画ならではの興奮が最も高い純度で詰まったあの歴史的ヒット作の35年ぶりの新作だ。 タイトルの「マーヴェリック」は、 トム・クルーズ演じる主人公ピート・ ミッチェルのコールサイン(戦闘機パ イロットが無線で呼ばれる名前)。 つまり、あれから35年を経ていまなおトップスターであり続けているトム・クルーズが、現役のトップパイロットとしても本作で大復活を遂げるのだ。他のアクターだったら「あり得ない」と笑われそうなそんな展開も、「あのトム・クルーズならば」と思わせてしまう。誰よりも映画に愛され、そして誰よりも映画を愛する男の奇跡を、2021年、我々は遂にスクリーンで目撃することになる。2020年3月以降、アメリカの主要都市にある映画館の休業が続いていることで、多くのハリウッド映画は行き場を失ってしまった。当然、その影響は日本にも及んでいて、我々が通っていた映画館では、その多様なラインナップの中心にあったはずの「ハリウッド映画」という大きなピースのほとんどが欠けた状態となってしまった。
巨大なスクリーンを前に、最高の音響装置に360度囲まれて、そこで起こっている「信じられないような 映像」に圧倒されるという体験。あの 体験を久々に思い出して、再び取り戻すのに、『トップガン マーヴェリック』 ほど相応しい作品はないだろう。35 年前の『トップガン』をきっかけに映画の楽しさに目覚めた世代も、スーパー ヒーロー映画を追っかけている若い世代も、誰もが夢中になれる"本物"の映像体験。実在するスーパーヒーロー、 トム・クルーズが映画界を救う!———宇野維正(映画・音楽ジャーナリスト)
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