『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督の商業デビュー作品。
すごい。。
好き嫌いは当然あるだろうけど、少なくとも生半可な作品ではないことは確か。
簡単に好きと言えないような総括しづらさを抱えた作品だとも思う。
ただ、私としてはそういう作品に出会えるのが映画鑑賞の醍醐味だとも考えていて、結果、かけがえのない作品となったような気もする。
本作を語るときに色々と切り口はあるだろうけれど、まずすごく独特なのが、本作の温度感。
『ドライブマイカー』と近いようにも感じて、これは濱口監督の作家性なんだろうか。
(まだ2作品しか観ていないのでよく分かんない)
リアリティーラインとか、テンションとかとも微妙に違う、「温度感」としか呼称しようのないもの。
(悪い意味ではなく)ずっと地に足がついていないような。彼岸で展開されている物語のような。
もしかしたら、『ドライブ・マイ・カー』の作品内でも描かれていた、監督独自の演技演出手法に起因する要素なのかもしれない。
次にお話しについて。
いや、こんな地獄みたいな話を商業映画で展開すな笑。トラウマになるわ。
上述の通り2作品しか観ていない私がコメントするのも気が引けるけれど、同監督、登場人物による最小限の行為で人間の感情を最大限揺さぶるの、巧み過ぎないか?
特にめちゃくちゃ派手な事象が起きているわけではないのに、こんなに感情を揺さぶられる(殴られる、に近いか)の、普通に凄いと思います。
「女性移り気もの」というところではサラ・ポーリー監督の名作『テイク・ディス・ワルツ』を想起したが、当該作品が「なぜ彼女が浮気したのか」を丁寧に丁寧に描写して、浮気を強く否定する者ですら「まぁ、こういう状況ならしょうがないですわな」と考えざるを得ないところまで持っていくような作品だったのに対し、本作においては、暴力的なまでにその行為を放棄。
その結果、まさにその「展開の暴力性」によって物語が得体のしれないドライブ(文字通り)をしだす終盤は圧巻。
あとは各論になるが、やはり「東出昌大力」。改めて思ったけど、まず、普通にかっけぇ。
それに映画俳優としての彼にしか出せない格・華があると思います。
Winnyにも出ていたが、不祥事(本作きっかけとは知らなかった・・・)等どうでも良いので、どんどん映画に出てほしいなと改めて思いました。
それと、本作のいくつかの描写、ホラー演出として怖すぎるよ!
最近ネットでバズっているモキュメンタリー・ホラー読み物「近畿地方のある場所について」を読んだせいで「怖み」に敏感になっているのがあるかもしれないけど、東出氏が一つの怪異のように見えてくる描写もあったりして、心底ゾッとしました。
以上です。
凄まじいものを観た、という感想。
これまた評判の良い『偶然と想像』、いつ観れるんだろうか・・・。
(補足コメント)
仲本工事、演技うますぎんか…?