オトマイム

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のオトマイムのレビュー・感想・評価

4.3
lollipopみたいな毒々しい色彩にフロリダの強い陽射しや夕陽がふんわりヴェールをかけて、若干白飛びした映像がおとぎの国のように幻想的。目眩がするような太陽のもとでは色んなものがちょっとずつ宙に浮いているのかもしれないね。それともミッキーマウスが杖を振って魔法の粉を振りまいたのかも。

貧困によるどん底生活や常識はずれの母親が小さな子供にとっていい環境であるはずはない。けれども不思議なことに、映画を見終えて浮かんでくるのは子供と過ごす時の母親・ヘイリーの笑顔ばかりなのだ。ムーニーは将来ママのことを恨むかもしれないし不良になる可能性大ではある、だけどハッピーな思い出も抱えきれないくらいあるんだよ!一緒に遊んだ時のママのビッグスマイルを、焼けつくような暑さや倒れた木とともに彼女はいつでも思い出すだろう。そしてきっと力強く人生を歩んでいける。

辛いことなんて何ひとつないAmazing World、それは幸せの象徴。手を伸ばせば届きそうなのに。底抜けに明るいフロリダの空。先の見えない息苦しさや空虚さ。それらのイマージュが混じり合った、胸が締め付けられるような作品だった。