このレビューはネタバレを含みます
元々お金が無いからモーテル以外に住めるところがなく、仕事もできない。そんな悪循環の中で生きる親子の話なんだけど、この映画では徹底して主人公たちの置かれた生活の苦しさや影を"画面上から"排除している。貧しくても物乞いしてもどこか緩い雰囲気が漂っているのは、主人公たちの感情描写をあえてしていないから。
毒々しいほど鮮やかなモーテルや空の色、お風呂に入っている時に部屋で"何か"をしている母親、躍動感あふれるラストシーンの画作り。これらは全て、子どもの視点から描かれている。子どもだからその瞳にはいろんな色が鮮やかに映るし、自分がお風呂で遊んでいる時に母親が何をしていようと気にしないし、大勢の巨人(大人)が集まるディズニーランドが新鮮なのだ。
自己責任や弱肉強食が通用するのは自然や野生の世界の話であり、そもそも自己責任がまかり通る世の中なら国家の存在意義など無いわけで。
そんな息苦しい世の中が変わる日も来るかもしれない、とウィレム・デフォーの優しい笑顔を見て思った。