【第41回アカデミー賞 外国語映画賞受賞】
トルストイの同名小説を原作とした全4部の歴史大作。監督は『ワーテルロー』『人間の運命』のセルゲイ・ボンダルチュク。合計7時間の大作なので1部ずつ記録していく。
第1部 アンドレイ・ボルコンスキー
公爵家の嫡子アンドレイと、伯爵の私生児ピエールを中心に描く。
やっぱりボンダルチュクって凄くない?もちろんソ連の国力をあげた予算の力もあるんだけど、膨大なエキストラや広大な大地をどうやったら品格と迫力を持って映せるかを熟知している。
横移動のカメラ、縦移動のカメラ、円を描くように一周するカメラ、手持ち風のカメラなど様々なカメラワークを使い分け壮大なスケールと情感を生み出している。
少し説明過多なのが気にならなくもないが、トルストイの原作を映画にするならこのバランスでいいだろう。
倒れたアンドレイが見上げる空のショットが素晴らしかった。
第2部 ナターシャ・ロストワ
伯爵令嬢ナターシャが主役。舞踏会で会ったアンドレイと恋仲になるが、一年の猶予期間のうちに他の男に惹かれ駆け落ちしようとするが…
うーん、まあ技術的には申し分ないんだが、どうもナターシャに魅力を感じない。彼女はまあ若いとはいえあまりにわがまま、自分勝手。ナターシャ役の女優さんも微妙かなぁ。
第3部 1812年
後半はボルジノの戦いをひたすら映す。
やっぱり戦闘シーンはもの凄い。大量のエキストラ、広大なロケ地というソ連のバックアップはあるものの、芸術的なカメラワークはメリハリのある演出はボンダルチュクの功績が大きいのではないか。
上から段々地上へと凄いスピードで下がってくるカメラや、馬を追いかけたカメラなど「どうやって撮った!?」と驚くばかり。
それ以外のシーンは前2部に比べてかなり観念的になっている。というかどんどん観念的になっている。
かなりよかった分まとめ方でがっくりきた。雑すぎない?フランス軍圧倒的優勢なところで終わるのに「フランス軍に精神的打撃を与えたのだ!」っていかにもプロパガンダ。
第4部 ピエール・ベズーホフ
うーん、どんどん失速している感は否めないかな。
火災のシーンやアンドレイの幻想シーンなど面白い見せ方だなと思うところもあったけど全体に平板。
展開もダイジェスト的で分かりにくく、例えばナポレオン軍が突然撤退した感じになっていて「えっ!?なんで?」と思ってしまった。もちろん歴史的事実として知ってることが前提なのでしょうが。
フランス軍は極悪だけどロシア軍は優しいんだよみたいなのもどうなのかなと…今のウクライナ侵攻みてるのと全く同意できないというか…
全体
戦闘シーンはちょっと今の映画ですら太刀打ちできないんじゃないかな。膨大なエキストラ、壮大なセットとロケーションはもちろん、見せ方も非常に上手い。
ただそれ以外の部分は後半にいくに従って失速、観念的ですらあるように見えてしまう。
アンドレイとピエール(ボンダルチュク)はいいが、ナターシャはちょっと微妙かな。もしかしたらそこに限ってはオードリー版のほうがいいのかもしれない。
でも二度とこんなスケールのは作れないだろうし、ボンダルチュクの才能は疑いようがないと思う。