Masato

ビール・ストリートの恋人たちのMasatoのレビュー・感想・評価

3.3

バリージェンキンス監督最新作

「ムーンライト」は原作者と監督と脚本家の自伝的な意味合いがあるもので、そういった部分で人生について考えられるバイオグラフィー的なものとして楽しめられたが、今回はドラマとラブロマンスを静謐に描いた作品。

様々なサイトで見るあらすじは、彼氏のファニーが巻き込まれる冤罪を軸にして書かれているが、実際にはファニーが捕まったことで揺れ動く彼女のティッシュの物語であり、その周りの家族の話といったところに軸があった。なので、大半はラブロマンスで埋め尽くされており、ファニーの冤罪の話は副次的。私はそういった肩透かしで終盤まで睡魔に襲われた。ただ、ムーンライトよりかは話は分かりやすい。

あくまでも、黒人問題に関しては表面的には出さないで、表面にべったりとくっついているような感覚。ちらっと見えるところはあるものの、基本はラブロマンスなので、監督のメッセージを汲み取るのが非常に難しい。当時の黒人カップルの生きづらさを色鮮やかにしつつもリアルに描いたといったところか。あくまでも、当時の黒人カップルのなかの1組というリアルさが重要なのかもしれない。

原題の「if beale street could talk」「ビールストリートに口あらば」は「神がいるならば、どう答えるだろうか」といったニュアンスに近いと思う。原作者がビールストリートを「黒人の故郷」と呼んでいる。決して大声をあげることなく、静かに生きづらさをビールストリートに向かって吐露しているようだ。「デトロイト」、「フルートベール駅で」、「ストレイトアウタコンプトン」などにあったメッセージ性を文学的に言い換えていた。

バリージェンキンス監督の詩的な雰囲気は本作もしっかり存在する。終始モノローグと淡い映像が流れている。ムーンライトにもあった、人物をカメラの真正面に立たせてカメラ目線でこちらに訴えかけるように映すカメラワークも健在。また、非常に聴き心地の良いしっとりとした音楽もあり、とにかく音楽に関しては最高としか言いようがないほどに素晴らしい。一応、黒人問題が主軸にありながら、ここまで美しく詩的に描き出せるのは監督の持ち味か。

PLAN Bの名前があり、案の定ブラピが製作総指揮。「それでも夜は明ける」以来にブラピは黒人問題をとりあげた。批評家受けする内容と言ってしまえば聞こえが悪いが、普通の人が見たらかなり楽しむには難しい作品。

↑ムーンライトもPlan Bだった。
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