舞台はアメリカ、メンフィスのビール・ストリート。今尚深く根強く人々の心にありつつける人種差別。ニガーの恋人たちの愛と苦悩の物語。彼らに待ち受ける "人種差別の壁" はあまりにも高く、厚いものであった。
「グリーンブック」が光の当たった部分だとすると、『ビール・ストリート』は暗闇の一片。すべてがリアルですべてが現実。脚色が素晴らしく、リアルな映画の中に、受け入れやすさがある。
愛と苦悩の表現が美しい。緩急をつけて表現することで、より一層苦しみが生まれ、深い愛も描くことができる。胸が引きちぎられるような空間を生み出し、観客に "リアル" を突きつける。ただ生きようとしているだけのに、人種という壁がその生きることを遮ってしまう。
役としての演技ではなく、彼ら自身の苦しみや人生観が反映されているかのような表情。その視線は我々をただ見つめる。
差別はなくならない。ルールや法律、道徳心を養ったとしても、決して人間の心の奥底にある差別的な感情は消えることはない。If BealeStreet Could Talk... 彼らの声は届くことはない…