監督は「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス。この人が作る映画には力強さを超えた美しさがあるという話を前にしたけど、それが更に前面に出てきた感じ。冒頭のティッシュとファニーのデートシーンから2人がとても美しく撮られていて、作品の世界に吸い込まれる。
ジェンキンス作品もうひとつのポイントは音楽。これも黒人的な手法を強く感じるが、前作以上に「鳴らし方」にこだわりが感じられる。5.1ch環境で聞けば良く分かるが、映画のBGMという役割を超えて、映像の中の出来事に直接関わってくるような存在として扱われている。
純愛物としての要素と、冤罪をテーマにした社会派作品としての要素を持つ作品であるが、もうひとつの要素である、宗教問題に関する描写が前半のティッシュの母親との争いを最後に殆ど触れられていないのが残念。