ゆず

スリー・ビルボードのゆずのネタバレレビュー・内容・結末

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

好きがつまりすぎで点数に困る

マクドナー監督の、何がどう繋がってくか分からない話の転がり方、散りばめられたブラックなユーモア、でも笑わせて油断した所でスルッと入り込んでどうしようもない気持ちにさせてくるとこほんとめちゃくちゃ好き。
スリービルボードで一番好きなのは、病院運ばれたディクソンがまさかのレッドくんと同室、でも包帯ぐるぐるまきだから気づいてなくて、レッドは心配げに声をかけ、励まし、オレンジジュースはいるか、とか聞いてくるーーー!
っていう、あの流れの後。
同室だったとこ、多分作中で一番笑いが起きてたと思う。
私も笑ったさ。
でもその後、泣きながら謝るディクソンと、怯えと怒りを隠しきれないながらもオレンジジュースくれるレッドくん……。お前……めちゃくちゃ泣いてしまったやないか……。
あの手紙からのこれかぁああああああくっそおうまいなああああやられたなあぁ……。

第一、ウディハレさんが今回善人役だったのがマジ想定外だった。
あんな看板からスタートしてさ、当然のように「あっこれはクズ確定か~('▽'*)」って思って見ていたら……ああ、私はまた……またマイナスからの好感度爆上げに殺されている!!!

フランシスマクドーマンドも最っ高だったなあ……ああ、全方位に向けられていた彼女の怒りは、自分自身への怒りと、最後交わした言葉への深い後悔があるからこそなんだなあ。
脚本も見せ方も、キャストも表情もさいっこう……。配役最高だった……これ全員あてがきなんじゃないのか……。

思い返してて、もういっこじわっときたのが、ディクソンがチキチータ聞いてるところからの訃報聞いて気絶・大泣きからの殴り込みの流れ。すごい偏見入ってるけど、あえてあそこで流すのがABBAって、そんであの手紙の内容って、直接は誰も口にはしてなかったと思うけど、ディクソンもしかしてゲイなんじゃないかな、と思った人は結構いたんじゃないでしょうか。署長に友達以上の感情があったんちゃうんかな、と。
それがなかったとしても、署長ディクソンのセクシャリティには気づいてたんだろうなあ、とかさ。あの手紙の内容がさ……(人種差別と並んでゲイ差別の話が出てきまくるからそう思ってしまうだけかも)。
ただの妄想かもしれないけどね……とか思ってたら、パンフのレビューで「ディクソンはゲイであり、ウィロビーに報われない愛を抱いていた」と言い切られていて吹いてしまった。

エンドロールの後二人はどうするんだろうな。
ミルドレッドが「あの時脅しにきたクズ男じゃないか」って気づいて、適当に脅し返して7ドルを回収して帰るだけかもしれない、と想いつつ。
この全然相容れそうになかった二人の、友情ともちがう不思議な絆と共犯ぶりに、最後ものすごくグッときてしまうのは……なんでなんだろうなぁ……。

それぞれの愛憎や正義、そして決断が生み出す、いびつで不思議な繋がりと絆。完全に共感できるキャラなんていないのに、皆結構クズなのに、どのキャラも嫌いになれない、むしろ好き。
あ~~~~すごくすごく面白かった……。ありがとうマクドナー監督……もっと映画撮ってくれないかな……!
ゆず

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