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スリー・ビルボードのsoratoのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
3.9
観た後に、もやもや思い悩むというか、むずむずと考えが収まらない作品でした。しばらく母とは本作の話題でもちきり。
ドラマチックとはかけ離れているのに、期待をぶん殴ってひっくり返す苛烈さとパンチの強さがある。そこが人間の本質を突いているなあと。
まあ展開が読めない。えっ貴方ここでそうなるか!?あっでも貴女そこではこうなんだ!?……みたいな。全く王道をいかない。安心できない一貫性のなさを感じつつも、そこがすごく人間らしいです。
こっちの角度から見たら悪だけど、あっちの角度から見たら正義だったり、さらに言葉1つでくるっと変わったり、また戻ったり。人間関係や時間の中で善悪はどんどん動いていく。
だからリアルだし重いんだけど、平和ボケした頭ではタガの外れた人ばかりに見えるので、シュールな喜劇っぽさが強かったな。
怒りって高エネルギーの塊で、それまでぶつかり合ってた2つの火の玉が1つの塊に合わさったら、どれほどの爆発力になるか……私は考えるだに恐ろしいです。

オスカーを手にしたフランシス・マクドーマンドも、サム・ロックウェルも、その演技を観たら深く頷くしかない。演じた人物のどうしようもなさ、ヤバすぎるのではと思うけども、それがすんごく自然というか違和感がないというか、本当にこの人がそうであるような気がしてきて、妙に説得力があって納得してしまいました。

この人すごいダメだな……って心底呆れていても、時折見せる熱心さにすごく感心してちょろっと尊敬してしまう、とかよくあるんですよ。
今日の味方は明日の敵とか言いますけど、本当にタイミングや他人の言葉一つでころっと自分の行動が変わってんだろうな実はって思います。
オレンジジュースのシーンが忘れられない。私もその瞬間にはジュースを差し出せる人間でありたいな……
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