そーる

007/ノー・タイム・トゥ・ダイのそーるのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

忙しくて映画館に行けず仕舞いだったので
アマプラで鑑賞。

復習も兼ねてカジノロワイヤルから全作見てきた甲斐あって、本作は冒頭から没入することができました。


さて、どうやら評価がかなり分かれてるみたいですが個人的にですがダニエル版007の集大成として良かったのではないでしょうか?
もちろん、『スペクター』で終わっても良かったんですけど、あの終わり方だと自分みたいに次回作を期待しちゃうので、、、笑

その辺のファンも含めてしっかり向き合ってくれた作品だと思います。

やはり印象的だったパートはパロマとの潜入→戦闘シーンでしょうか。
3時間という大作の中ではかなり短いパートだと思いますが、演出も相待ってアナデアルマスの存在感は絶大でした。
戦闘中に一杯やるのもなんだか007らしくて良いですね。

議論を呼んだ感染のくだりについてはネットを見てもかなり考察が分かれてました。
個人的な考察ですが以下になります。↓
まずパーティでのシーンは(本当はボンドを標的にしてましたが)スペクターに反応する株に変えられたことにより、スペクターその他家族が死亡。
この時点ではボンドにスペクターに反応する株が付いている事になります。

次です。
サフィンに脅され、ブロフェルドに反応する株を含んだ香水を腕に付けたマドレーヌ。
面会の際に動揺しその場を後にしようとするところをボンドが腕を掴み静止。
ここでマドレーヌ→ボンドへと株が移ります。

そして1:1でブロフェルドの面会をする事になったボンドですが痺れを切らしてブロフェルドの首を掴みます。
これで元々マドレーヌの腕に付いていたブロフェルドに反応する株がボンド→ブロフェルドへと移りブロフェルドは死にます。

この時点で、
ボンドの手(身体)にはナノウイルスが2種類付着してますよね。
ブロフェルド株とスペクター株。
この件についてMI6が大して大ごとにしなかったのはブロフェルドは既に死んだしスペクターも全滅したから、でしょう。
もっと言えば別に究極彼らが死のうと国家に影響ない(むしろ好都合)からです。
なのでボンドの手に上記2種類の株がついていても本人含めそんなに気にしていない感じは整合性が取れるかと。

問題は、サフィンが保険と称して持っていた
小瓶です。
サフィンが何やら髪の毛を包んでいたシーンがありましたよね。
その後のボンドとの対決でそのシーンの伏線は回収されますが、
あの小瓶の中身はマドレーヌ株を持つナノウイルスです。
殺す目的でマドレーヌ本人にももちろん使えますし、
ボンドへ付けることで2人の中を割くこともできます。

サフィンは幼い頃に家族を皆殺しにされてから
この道を歩んできました。
国の為に人を殺すボンドと自分は同じだと言います。
ボンドも家族を失っていますしね。
そんな彼の思想からしたら、ボンドに愛する家族がある事は許せないのかもしれないです。

理由はなんにせよ、サフィンは死ぬ間際その小瓶を使いボンドを感染させました。
これによりボンドは3つ目の株、マドレーヌ株を持つウィルスを体に取り込んでしまったのです。

自分が生き続ける事で、マドレーヌそしてその子供へとこの感染が続いてしまう恐れがある。
そう思い、降り注ぐミサイルの中、絶命します。

マドレーヌはスペクターであるミスターホワイトの娘なのだから、スペクター株を持つボンドと触れ合うシーンでマドレーヌが死なないとおかしい、というコメントも見かけましたが
こちらは何もおかしくないと思います。
というのも時系列的に考えれば、ミスターホワイトが死ぬのはサフィンのこの作戦よりも前です。
全ての生き残りのスペクターを根絶やしにするという目的で、大規模ハックによりDNA情報を盗み出した後科学者により設定させているので
ここに既に死んでいるミスターホワイトのDNAを認識させる必要がない(もしくは手に入れていない)のです。

もちろん、娘がいることも分かっているんだから
ミスターホワイト(もしくはマドレーヌ)のDNAを設定しといても良いよね?という意見もあると思いますがこれは劇中にサフィンがマドレーヌに対してマドレーヌを生かした理由をしっかり語っているので、ないと思います。

よって、特にこの感染のくだりについては何も矛盾はないのかなあと個人的には思いました。

いかんせん本作は、『愛する者に触れられない哀しみ』を描いているので方法はなんでも良いように思います。
この内容を描く為に現代に合わせた理由をつけるとすればそれが生物兵器だったのでしょう。
この『愛する者に触れられない哀しみ』を感じ取るのは我々視聴者には少し難しいかもしれませんが、
ボンドの立場に立って考えれば分かるはずです。

本気で愛したヴェスパーに裏切られ、
それでも救おうとしたが目の前で失った過去。
後ろを振り返らずにはいられない人生に
ようやく希望を見出せた存在マドレーヌ。
過去と決別し、マドレーヌと未来へ歩こうと決めた矢先、マドレーヌに裏切られたと思ったボンドは彼女を列車に乗せ一度は別れを告げます。
そうして5年。
運命の巡り合わせか、不遇な形で再会した2人(とその子ども)はそれでも愛を確かめ合った。
それも束の間、ボンドは自分が原因で、愛する者と触れ合うことが2度とできない身体になってしまった。

これほどダニエル版007の初作からの伏線をしっかり回収し、哀愁の名の下終幕する結末は他にないのではないでしょうか?
個人的には見事な終わり方だったと思います。

ちなみに、英語なのではっきり聞き取れたわけではなかったのでこの解釈は間違っているかもしれませんが、
マドレーヌの家で再会した際に、ボンドが
『君といれたあの短い時間は〜』とマドレーヌへの愛を説くセリフ。
英語では"5 minutes"と言っていました。
エージェントであり常に気を張って生きてきたボンドの人生において、
彼女と過ごせたかけがえのない時間はほんの5分間だったと感じるくらい短く名残惜しい時間だったと思うと胸が苦しくなりました。

任務中フィリックスが死ぬ際、『お互い良い人生を選んだな』というセリフがここで活きてきます。
エージェントである彼らにとっては任務中に死すことがほとんど。
それでもフィリックスとボンド、ボンドとマドレーヌの関係のように短くとも色濃い時間を過ごせる仲間や愛する人がいる。
とても愛が深くて、哀しい作品だと改めて思います。

次回は誰になるのでしょう。
‘’No time to die’’
まだしばらく私にとってのボンドはダニエルクレイグでしょう。
そーる

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