Junichi

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のJunichiのレビュー・感想・評価

4.0
「あなたのタクシーから、今の韓国を見物したいです。」

【撮影】9
【演出】5
【脚本】7
【音楽】9
【思想】10

1980年5月に韓国で起こった光州事件
軍による市民と学生への弾圧を取材した
ドイツ人ジャーナリストと
彼をソウルから光州へ送り
またソウルに戻した韓国人タクシー運転手の話

1979年に暗殺されたパク・チャンヒ大統領の娘
朴槿恵が大統領任期を終え
1980年当時
左派の学生だったムン・ジェイン氏が大統領に就任した
2017年に公開された映画

なにやら因縁を感じます

全斗換大統領時代(1980~88)
光州事件についての情報統制が敷かれ
多くの市民たちが光州事件を知ったのは
1990年代以降とのこと

ちなみにソウル五輪は1988年

もちろん
現在のムン・ジェイン政権では
当時の市民や学生たちの行動は
肯定的に評価されています

本作品
ポスターから伝わるソン・ガンホの笑顔から
コメディ作品の印象を持っていましたが
とてもシリアスな話でした

カタコトの英語で会話するなかで
少しずつ打ち解けていく
ドイツ人ジャーナリストと韓国人運転手

この二人の関係をもう少し丁寧に描ければなおよかったと思います
例えば
ジャーナリストとしての使命感と
お金を稼ぐためのタクシー運転手の仕事を対比させ
二人の衝突から融和が描かれていれば
タクシー運転手の葛藤や
彼が光州に引き返す理由も納得します

映画冒頭でも注意喚起されていますが
本作品は事実をもとに創作された部分があります
カーチェイスなど演出過多(やり過ぎ感)も否めませんが
そうした市民側を英雄視できる映画を作れた
今の韓国の自由で民主的な状況に安心します

ひるがえって
現在の日本はどうなのでしょう

日本に軍隊はありません
しかし
権力者が傲慢に暴力をふるっていないか
市民が監視する必要があります
彼女ら彼らに政治をする権力を付与しているのは
我々市民なのだから

権力を持った人間に武器を与えてはならず
武器を持った人間に権力を与えてはならない

かつての闘士たちと
現在の闘士たちにオススメです
Junichi

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