アキラナウェイ

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

4.3
ジャケットのソン・ガンホが毒蝮三太夫に見えてしょうがない。

評判が良かったので、ずっと観たかった作品。

序盤はソン・ガンホのコミカルな演技が微笑ましいが、僕は知っている。韓国映画がこのままでは終わらない事を。序盤が楽しそうであればある程、それは中盤以降、絶対エゲツなくなるフラグだという事を!!

ほらーーー!!やっぱりーーー!!

ソウルのタクシー運転手キム・マンソプ(ソン・ガンホ)は、ドイツ人記者のピーター(トーマス・クレッチマン)を光州まで乗せれば運賃として10万ウォンが支払われるという儲け話に飛びつく。しかし、光州で彼らが見たものとは——。

またまた知らなかった世界情勢を知り、開いた口が塞がらない。

1980年5月に起きた、民主化を求める民衆蜂起の光州事件。学生や市民を中心としたデモ隊と戒厳軍との銃撃戦を伴う武装闘争は激しさを増す一方で、当時光州は軍により完全に封鎖されており、正しい情報は報道されていなかった。実際は戒厳軍による一方的な市民への暴力と無差別的な殺戮が繰り返され、死者は154人に上った。

ソウルから高速道路を走り、光州の郊外までは長閑な田園風景が続いていたのに。

光州に入ってからの地獄絵図が壮絶。
老若男女問わず、殴打され、蹴飛ばされ、倒れていく民衆。

民衆に容赦なく発砲する軍隊の姿に目を疑う。
なんでだろう。
何故、何の躊躇いもなく撃てるのだろう。

ドイツ人記者のピーターは、光州の実態を世界に公表すべくカメラを回し、最初は能天気だったキムも次第に感化され、ピーターと共に真実の報道の為に奔走する事になる。

終盤のタクシーによるカーチェイスが泣ける。

報道とは、情報を繋ぐ事。
撮影したその映像を繋ぐ。
世界に発信する為に繋ぐ。
命を繋ぐ。
途絶えてしまっては、全ては闇に葬られてしまうから。

実在のモデルとなったタクシー運転手キム・サボクと、ドイツ人ジャーナリスト、ルゲン・ヒンツペーターとの友情に胸が込み上げる。サボク氏との再会を願ったヒンツペーター氏のインタビュー映像が切ない。