ペイン

犬猿のペインのレビュー・感想・評価

犬猿(2017年製作の映画)
4.3
“大女優ニッチェ江上、爆誕”

胃がキリキリと痛むような悲喜劇をとらせたら日本一!こと吉田恵輔監督新作。

「さんかく」という作品を観て低予算でも人と人との微妙なすれ違いでここまで面白い映画が撮れるのか!と日本映画に希望を抱かされ、2016年邦画を代表する大傑作ノワール「ヒメアノ~ル」で完全に吉田恵輔監督に心を鷲掴みにされた身なので今回も非常に楽しみにしていました。

結果やはり安定の吉田恵輔クオリティでした。「ヒメアノ~ル」同様にタイトルが出るまでの意地ワ~ルな演出には唸りました(笑)底意地の悪さという意味では過去最高かも。

基本的にはオリジナル脚本で映画を撮られる方なのでやはり作家性がもろに出て本当に面白い。

本作は兄弟というもののいがみ合っても結局離れられないという性を見事に描ききっている。その“わかる~”“あるある~”と100回頷きたくなるほどの緻密すぎる人物描写はどうしたら出来るのか本当に教えて頂きたいほど素晴らしい。

キャスティンクも最高で窪田正孝、新井浩文、筧美和子と見事なハマり役なのだが中でもニッチェ江上にはぶったまげた。今年の「スリー・ビルボード」のフランシス・マクドーマンドにも匹敵する演技で半端じゃない逸材だと感じました。この先長く日本映画に欠かせない女優になるのではとすら感じた。


ただ本作、中盤までは最高なのだが終盤のある展開から非常にくどくてウェットで説明的になってしまっていて萎えてしまった。あそこが改善されていれば満点に近かったかもしれない。惜しかった。でも確実に今年観ておくべき日本映画のひとつです。
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