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鈴木家の嘘のrimiのレビュー・感想・評価

鈴木家の嘘(2018年製作の映画)
4.0
穏やかな昼下がりからいきなり始まる浩一の自殺。全体が映っていて言葉を失った。
その後母は手首を切り、昏睡状態に。
父は母が意識を失っている間ソープ男爵へ。
割れている車の窓ガラス。
妹の富美はしっかりしていて落ち着きがある。
浩一の誕生日の日、何を言ったのだろう。
富美が訪れたブリーフケアで交わされる想い。
米山さんがいい味出してた。
目覚めた母は逆行性健忘で浩一の死の記憶が失われていた。
母を元気づけるためについた何気ない嘘。

始めにつけられた印象とは違った角度での印象をを見ることによって、ひとりひとりの行動の理由や亡き人を想う気持ちに深みが増していた。
母が手首を切った理由、父がソープに行った理由、割れた窓、浮いている米山さんの本当の姿、富美の心の葛藤など。
あぁ、すごく良いなぁと思うシーンがいっぱいあった。
とくに富美(木竜麻生さん)がなにかを振り払うように部活に打ち込むけど、頭に反芻される最後の瞬間がまとわりついて払いきれず、鬱積した想いが爆発してしまって叫ぶシーン。良かった!
木竜さん若いのにすごい。今後の活躍も注目したい。
あと、最終的に本当のことが明るみになって記憶が戻り、母の頭の中で再生されていた「母さんへ」の浩一の溌剌とした声色が、落ちていくエアメールと共に低くなっていくシーン。
あと、岸部一徳さんと加瀬さんに任せたというふたりの衝突のシーン。めちゃくちゃ良かった。
あと、先日観た「寝ても冷めても」や、この映画でも濁った川がいい味出してた。

オーディオコメンタリーでの木竜さんと監督のお話も面白くて、リアリティを出すための秘話を聞けるのは楽しい。ミヒャエルエンデ読もう。
あと監督が「感情が全部分かるようだったら撮らない」と言っていたのが印象的で、俳優さんに降ってきたものを信じて、その瞬間を昇華させるのはさすがだなぁと思った。
喪失した後の不安定な心の機微、自問自答がとても丁寧に描かれているなぁと思った。
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