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ゆらりのKUBOのレビュー・感想・評価

ゆらり(2017年製作の映画)
4.8
10月12本目の試写会は「ゆらり」。聞いたことないかもしれないけど、これは「大穴」でした。

あんまりたくさん映画を見てると素直に感動することが少なくなってくる。先を予想してみたり、他と比較してみたり。

本作は、そんな邪念をいとも簡単に吹き飛ばして、心から感動させてくれた。見終わってしばらく経っても感動の余韻が残っているなんて、そうそうあることじゃない。「湯を沸かすほどの熱い愛」以来の衝撃だ。

昨今の邦画では「愛」を語るのに「毒」や「棘」から描く変化球が多い。溢れるほどの数に埋没しないように、インパクト勝負、話題性重視になってはいまいか?

そういった時流に反して、本作はどこまでも「優しい」。ここまで「優しさ」だけで成り立っている作品を私は知らない。

それはともすれば、平凡になってしまったり、陳腐に感じてしまいがちだが、本作はその「優しさ」だけで、見るものの心を揺さぶり、心からの涙を流させる。

三章からなる本編は、そのどれもが「母と子」の物語。一章、二章と見ている間は、ただのよくできたホームドラマと思いがちだが、本作の肝は三章にある。三章で全てのキャストがひとつに繋がった時に、本作がなぜ「ファンタジー」なのかがストンと落ちてきて、最後のセリフで感動は頂点となる。

何というよくできた脚本だろう! 本作は原作・脚本を手がけた「西条みつとし」の舞台を映画化したものだそうで、監督は本作がデビューとなる「横尾初喜」。日本映画界の新たな才能が登場した。

舞台挨拶に立った主演の岡野真也も可愛かったな〜。

公開は東京では池袋シネマ・ロサ1館。確かに制作費もそんなにかけられなかった作品かもしれないが、見れば絶対感動するから、本当はバンバン試写会を打つべき作品なんだが、試写会も今日一回きりという。あー、この感動をなんとか広めたい!

今年200本以上見てきて「これが一番感動した映画」! 今年一番のオススメです!
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