Yui

カランコエの花のYuiのネタバレレビュー・内容・結末

カランコエの花(2016年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

ある日クラスでLGBTの授業が行われたが、その授業はそのクラスでしか行われていないと知った生徒達は、自分達のクラスにLGBTの人がいるのでは?と疑い始める。

作中の授業といい、作品といい、LGBTQそのものについてのストーリーではなく、アウティングについての作品だったんだなと途中で理解しました。

学校という狭い社会の中で、当事者ではなくその周りの人達の目線で描かれている本作。これがリアルかといったら私の経験的には全然そうではなかったのだけど、こういう事もあるのかなぁと思うような内容。

【アウティング】とは、
本人の了解を得ずに、他の人に公にしていない性的指向や性同一性等の秘密を暴露する行動のこと。 

たまたま保健の先生と当事者がしていた話を聞いてしまったクラスメイトが、月乃に「誰がレズビアンだかたまたま知ってしまって、その子がずっと辛そうにしているのを見ているのが辛くて…」というシーン。なんでそれを言うのが意味が分からなかった。
そしてそれに加えて、月乃が「誰?」って聞く想定はしていなかったので衝撃すぎた。クラスメイトが辛いと言ってる事とかガン無視で、まず興味、好奇心。いや~びっくり。言わないし、聞かないし、言えないし、聞けないなと思う。

ちょっと話は変わるけど、私の友達夫婦が子供がいないんだけど、それを「あそこって子供まだなの?出来ないの?作らないのかな?」って、私に聞いてくる輩は何なの?!どういう神経でどういうつもり?!それを聞いてどうしたいの?!あなたになんの関係が?!
それと同じくらい意味が分からなかった。

ちなみに、そう聞かれた時、本当に悪気ない感じの人には「そういう話しないから分かんないな~」と返し、明らかに好奇心丸出しの奴には「知らないし、そういう話は本人以外がする話じゃないと思うから本人に聞いたら?」(どうせ聞けないので)と返してる。空気を悪くしない範囲で。他にいい返しあったら教えて下さい!


あとは、黒板消すシーンは辛かったな。月乃にとっては善意のつもりだったかもしれないけど、その善意は偏見から来るもので…。本当は本人が書いていたのに、無意識の思い込みが彼女を逆に傷付けてしまったのよね。

学校側も、そのクラスだけ特別授業をしたのも良くなかったし、LGBTQについても一方的に押し付けたような言い方で、生徒の思いも聞かず、考えさせる事もしなかったし、誰がLGBTQだって、犯人探しみたいになる事は目に見えていたのに、実際揉め事になれば悪いのは生徒になってしまう…。この先生と学校側はめちゃくちゃ問題。これが正しいとされてしまうのではというのは恐怖に感じました。

これは大人が起こした悪い例ですよ、
これがアウティングですよ、
という作品だとしたらとても良く出来ていると思うけど…たぶん違うよね?

学校、教育として考えたら、このシーンだけではやっぱり解せない。これがスタンダード思ってしまう人がいたら、とても嫌だし、これがスタンダードだとしたら本気で良くない。

とても考えさせられた事に変わりはないんだけど、作品として、肯定したくないなというしこりが大きく残ってしまう作品でした。

でも、私もきっと誰かを傷付けてる。嫌な思いをさせてる。悪気なく傷付けられるのは一番辛かったりもするから…どんな場面でも、思慮深く、思いやりを持ちたいな~。



2022-199
Yui

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