このレビューはネタバレを含みます
完成披露試写会@A i i A 2.5theater tokyo
阿部進之介・安藤政信・清原果耶・田中哲司
藤井道人監督・山田孝之プロデューサー
オリジナル作品。
全編秋田ロケ。2017.冬に撮影。
父が自殺した為実家に戻った明石(阿部進之介)父と仲が良かったわけではない。
父は不正を摘発して大手自動車メーカーから糾弾され耐えきれずに亡くなった。
実家には嫌がらせもたくさんあり、母も妹も疲れ切っていた。
父の葬儀の後、児童擁護施設を運営する北村(安藤政信)に声を掛けられ働くことになる。
昼は児童養護施設の食堂を手伝うが、そこで子どもの頃から施設で育った奈々(清原果耶)と出会い心を通わせていく。
北村に連れられて廃工場に行くと、車の窃盗の現場に出くわす。
北村は車の窃盗や風俗店の元締めと犯罪に手を染めていた
子供達を養う為には何でもやると北村。
戸惑っていた明石は、父も生前手伝ってくれいたと聞き、父の足跡を辿っていく。
昼は善、夜は悪を行う明石。
絵が上手い奈々は進学したい希望もあるが、環境がそれを許さない。
明石は父の自殺の原因になった大手自動車メーカー社員三宅(田中哲司)が証拠を隠滅したことを突き止め、復讐することを心に誓う。
盗みの仲間に頼み証拠を取り戻し、新聞社に持ち込むが、過去の事件なので相手にされない。
奈々は戸籍を取り寄せた時に、迎えに来てくれると信じていた親が死んでいたことを知り、激しく北村を罵る。
北村は自分の妻を奈々の父に殺されていた。北村は奈々の父をその場で殺すが正当防衛として不起訴になった過去があった。
娘の奈々を児童擁護施設で養い、奈々の為に高額な預金も貯めていた。
奈々から父と一緒に殺して欲しかったと言われ、北村は滝壺で命を絶つ。
北村がいなくなった後、夜車の窃盗に行くと警察に先回りされ仲間が捕まってしまう。三宅が手を回したらしい。
逃れた明石は、三宅と対峙するが、善は数だと言われてしまう。
三宅を殴った後、殺人未遂で逮捕される。
高校を卒業した奈々は東京に行くことを決意する。明石の面会に訪れた奈々。
善と悪の境目、人の持つ二面性を描いている。
三宅は明石の父を自殺に追い込んだが、社会的には無傷で生きている。
明石は自分の信じる正義に向けて行動したが、捕まってしまい、家族をさらに悲しませてしまった。
秋田の冬の凍てつくような夜が長く、昼の暖かな日差しが短いことを表している。
善は悪に覆われていってしまうのか。
明石の作る食事が美味しそうで、子供達と一緒に過ごす日々が続いて行けば良いと思うし、明石や北村が犯罪に手を染めていても彼らを応援したくなってしまう。
やはり、オリジナル作品は最後まで結末が分からず、展開を追っていく楽しさがある。
阿部進之介が原案を出し、藤井道人、山田孝之が脚本を手掛けた本作は荒削りではあるが、チャレンジした作品だと思う。
結末や善悪の判断は観客に委ねる形。
北村の正義は子供を守ることだったが、他方で犯罪集団を率いていた。
不正を隠蔽した三宅はのうのうと生きている。
阿部進之介は迷いながら進む主人公、だんだん吹っ切れていく様を表現している。
圧倒的なヒロイン、清原果耶。影がありながらも穢れのない佇まい。父親が殺人犯だったと知った時の咆哮。感情の幅が広い。
安藤政信は、過去を抱えながら淡々と犯罪に手を染めながら、子供達には優しい父親のように接する二面性のある役。守るものと犠牲にするものの狭間で微妙なバランスを保っていたが、奈々からの言葉で崩壊する。
主題歌は野田洋次郎×清原果耶
透明感のある姿そのままの美しい声だった。
インディペンダント映画の新しい形になると思う。原作は無く、企画から脚本、ロケ地、制作資金の調達。。
大手の映画にオリジナル作品が少ない中、意欲作だと思う。
今回は出演せず、プロデューサーとして裏方に回った山田孝之の努力もあった。