役者達や制作陣の熱が籠ったパワーが画面から伝わってきたり、自然背景を上手く使い、心情をリアルに描写することに感心する。強度抜群の画力に引き込まれて、重厚なテイストなのにテンポが良いことに好感。
長瀬智也をやさぐれさせたような、主人公・阿部進之介のキャラが絶妙。心情の葛藤と言うよりも、根幹にある人間の業のような表情が作品の重いテイストとマッチしていて良い。登場から空虚感を抱く安藤政信や、清原果耶の孤独さも印象的で、特に安藤が高校と児童養護施設を同時に卒業を迎える清原のことで虚無的になり、利他的な〈罪と罰〉の行動は、考えさせられる。
映像的な演出は抜群に良いのだが、明らかに脚本に問題も。善悪などの人間の二面性の中のパラドックスの振幅が弱く、それ相応の説得力が乏しいので、スッキリしない。犯罪に進んだ切っ掛けがキャパオーバーな問題に対峙した逃げにも感じ、犯罪の対象者を絞ることなどできなかったのだろうか。
作中でリフレインされることが2つあり、風力発電機の背景と「正しさ」への問いかけである。心情の変化に気がつかせる手法だが、様々な対比の問いかけの振幅が弱いので、変化が弱く感じる。また、風力発電機は何か(政治?、問題の代替?)のメタフォリカルだと思うが、可視化されていないのが残念。
突っ込み処もあるが、真っ向から取り組む姿勢は好感で、興味が尽きなかった。再生やカタルシスの解放しない幕引きも、たまには悪くないが、〈愛と赦し〉は必要だったのでは。