中央アジアのキルギス共和国が舞台。
祖先が遊牧民だったという男は近所の有力者が高値で買った馬を盗んでは夜中に草原を走らせていた。
キルギスというと「ソ連崩壊の頃に独立した国」としか知識が無かったけど、この作品ではキルギスに住む人々の生活、伝統的な文化、宗教的な問題、近年の資本主義の台頭…などが描かれている。
遊牧民にとっては翼として大切だった「馬」が今は競走馬として金儲けの手段になっていたり、昔の映画館がイスラム教徒のモスクになっていたり。
監督、脚本、主演を一手にこなす主人公が両手を広げて馬と共に走る姿に感動。
やや狂信的ではあるけれど純粋な男の信念に気持ちが動かされる。
あまりに純粋な人間って中々幸せにはなれない…って気もする。
そして経済にばかり先導されて心を見失ってはいけないというメッセージも受け取れる。
耳が不自由で話すことが出来ない妻と、幼い息子との3人の暮らし振りが微笑ましかった。