「午前十時の映画祭14」で面白かった順位:15/18
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆
「午前十時の映画祭14」にて。
1976年のアメリカ映画。
視聴率に踊らされるテレビ業界の人々を描いた映画で、それによって人生が大きく変わってしまうのが面白い作品だった。
この映画は、視聴率至上主義の持つ怖さを風刺を交えながらエンタメとして成立させているところが秀逸だ。
放送局のUBSに所属しているハワード・ビール(ピーター・フィンチ)というニュースキャスターが、視聴率不振を理由に解雇されてしまうところからすべてが始まる。
やけくそになった彼は、ある日生放送中に「来週、この番組内で自殺します」って全国に発信してしまい、UBSは即座にハワードを解雇しようとする。
でも、彼の親友でニュース部門の責任者であるマックス・シューマッカー(ウィリアム・ホールデン)が間に入り、ハワードが最後に番組内で別れの挨拶を告げる場を設ける。
ところが、ハワードはそこで「人生なんてくだらない」とわめき散らしたのだ。
最悪の状況になったと思いきや、ハワードのこの醜態がウケて視聴率が爆増。
そこで、彼を起用した新番組を立ち上げようと考えたのがエンターテインメント部門のプロデューサーであるダイアナ(フェイ・ダナウェイ)である。
彼女はとにかく野心の塊のような人で、どんな手を使っててでも視聴率を上げようと躍起になるバリキャリの女性だ。
ハワードを起用した番組は瞬く間に人気となった。
その内容は、預言者となったハワードが世間に対して怒りをぶちまけるというもの。
個人的にはそれのどこが面白いのかまったく理解できなかったけど、この映画の舞台となる1970年代というのは、ウォーターゲート事件やベトナム戦争の敗北など、アメリカが不安定な時期でもあったので、怒りを代弁する人が必要だということでこのような番組になった。
やがて、ハワードはUBSの大株主であるCCAが、アラブ人によって株を買い占められていることを批判したせいで、CCAの会長に呼び出しを食らうことに。
そこで会長から「この世の中を動かしているのは主義や思想ではなく、大企業やそれによって生まれるビジネスである」という持論を吹き込まれ、以降、ハワードも番組で現代における人間性の喪失について話し始め、視聴率が下がっていく。
スタッフはみんな頭を抱え、最終的にはハワードを殺そうってことになり、番組の冒頭で観客に扮したスタッフから銃殺されて幕を閉じるのだ。
正直、ここはもうツッコミどころありまくり(笑)
風刺映画ってことで多少は極端な表現になっているとは思うんだけど、そもそも生放送とはいえ何を話すかは事前に打ち合わせをすると思うんだよね。
だから、ハワードがその日何を話すかもある程度は決まっているはずなのに、完全に自由にやらせていたのだろうか。
ただ、視聴率に踊らされた傀儡という扱いで、もはや本人の意志とは関係なく、まわりから骨の髄まで利用されているという見方もできなくはないかな。
そんなわけで、視聴率に踊らされた人々を描く風刺のきいた作品で興味深かった。
現代でも視聴率云々という話は日本でもよく出るので、テレビ業界あるあるなのかも。
本作は『ジョーカー』(2019)に影響を与えた映画でもあるので、それを意識しながら観るのも一興かと。