鰹よろし

ホーンテッドテンプル 顔のない男の記録の鰹よろしのネタバレレビュー・内容・結末

2.0

このレビューはネタバレを含みます

 最初に日本人である刑事とアメリカ人である容疑者との、言語の壁がある両者の間に入る通訳の存在を印象付けいているが、劇中登場する人物たちの関係性は一筋縄ではいかないどこか歪さを伺わせるものである。

 日本観光に訪れた3人(男2人女1人)は、女を中心に据えカップルと幼馴染という関係性が交錯している。カップルの関係には幼馴染が割って入り、幼馴染という関係にはカップルが割って入る様が度々見て取れ、どこかうまくいっていないが、その関係性がすぐさま崩壊するかと言えばそうでもない。その間を取り持とうと誰かが仲介するか身を引くことで交錯する関係性を維持している。

 ヒトとヒトの結びつき。それを結びつけるのもまたヒトである。


 ・刑事(日本人) - 通訳 - 容疑者クリス(アメリカ人)

 ・カップル(アメリカ人) - クリス(通訳) - 日本人

 ・彼氏(ジェイムズ) - 彼女(ケイト) - 部外者クリス

 ・幼馴染男(クリス) - 幼馴染女(ケイト) - 部外者(ジェイムズ)

劇中ではこれらを総じて、

 刑事 - 通訳 - クリス - ケイト

・・・と事件の捜査の過程、行方不明のケイトの捜索の過程とで結びついていたわけだが、そんな関係性がラスト破綻する。

 刑事と容疑者とを結ぶ通訳が殺されたことで言語の壁が再び立ち塞がり、幼馴染(女)の彼氏を殺した容疑者として浮上した幼馴染(男)の逃亡は行方不明の女性へと繋がる手がかりの喪失を意味する。刑事とケイトとを結びつける糸が完全に途切れたわけだ。まだ息のあるケイトを映し出すことでその絶望に拍車をかける。

 口頭伝承にしろ、文書によるものにしろ、現在へと脈々と伝わっているだろう歴史があるわけだが、その伝わった歴史の背景には伝わらなかった、いや伝えることができずに閉ざされた歴史もまた存在する。

 劇中で展開された人と人との結びつきとそれの破綻とでいったい何が展望できるだろうか・・・
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