太賀のインドネシア感……
海では結局人は生きられない。それぞれの陸には歴史があって(海にも歴史があるが、少なくとも海そのものの歴史は人のものではない)、だからこそ言葉や理解が違う。かといって、その間にある海は暗黒で断絶しかもたらさないかと言われたら、そうではない。海は違いを感じながら人を緩く結びつける場所だ。
「海を駆ける」のは心地よい体験だが、生活たり得ない。海は突然人を覆い尽くす。僕たちは自分たちの陸を見つけなければいけない。
夢の中で阿部純子が海からトーチカを見るカット。ピントが合わずに父の顔はぼやけている。現実でトーチカに(陸から)立った時にはじめて父の顔がしっかりと浮かび上がる。