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ヒューマン・フロー 大地漂流のmaiのレビュー・感想・評価

3.6
こういう現代の問題に切り込んだ作品を見るたびに思うのですが、観終わったあと自分の中で感想は固まるけれど、どこに重きを置いてレビューしようか、評価しようかと悩みます。

映画としては構成があまりうまいとは思いませんでした。とにかく彼が目にした光景を繋いだ感じで、そこにストーリーや流れがあるわけではありません。もちろん、難民の問題があちこちに点在していて、その問題が今膠着状態であるから、明確なストーリーが作れるわけはないのですが、それでもどういった意図で各シーンがその順で流れていくのか…といった構成は欲しかったなと思いました。なんとなく、各々のシーンが散漫だったように思います。

映像価値としては非常に高いと思います。
それだけでもこの映画の重要性が語れると思います。様々な地や様々な人への取材は、言葉が多くなくとも十分に伝わるメッセージです。
人間としての尊厳を求めることが、どうしてこれほどまでに難しいのか…。
でも、過去には難民を受け入れることに寛容だったことからも分かるように、理想と現実のギャップはどうしても乗り越えることができない壁でもあるのだと思います。
そう考えると、ジャーナリズムとしての目線に立った場合、この映画は難民側しか描いていないので、若干の不平等感はありました。確かに、政府が不寛容かのように見えますし、国民が不寛容のように見えます。しかし、そこの根本を辿れば、彼らにとっては多くの難民を受け入れることで負うリスクだったり支援だったりが、かなり生活の負担になることを危惧する気持ちも存在しているのだと思います。だとするなら、そちら側の「受け入れ反対」を述べるグループの意見を少しでも取り入れれば、よりフェアな映画が作れるのではないかなと思いました。
わたしの好み的に、ドキュメンタリーでインタビュアーとして立っている人が映画に頻繁に出てくるのは、なんとなく搾取してるような気分になって好きではないので…。

ただ、これを撮れたのも監督の人望や人柄あってこそだと思います。
なので、映像価値としての評価をつけます。
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