これは学園の中で繰り広げられるクライムサスペンスだ。ただし獲物は金でも宝石でもない。彼らがほしいのは、試験の点数。
中国で実際に起きた集団不正入試事件をモチーフにタイで製作されたスリリングな〝カンニング〟ムービー😊
過去にもカンニングを題材とした映画はあったが、本作はそれらの中でも最もスリリングでスタイリッシュ。それがタイを舞台としたタイ製作の映画というのが驚きだ。
タイ国内で2017年の興行収入1位を記録すると、国外でもアジアを中心に大ヒット。〝カンニング〟という明らかな悪事をまるで「オーシャンズ」シリーズの犯罪のプロたちが鮮やかに仕事をこなすように描き、緊張感あふれる場面をエンターテイメントとして演出する。
主人公の天才少女が演じるのは、カンニングする方ではなくさせる方。窃盗や詐欺などと違いカンニングは、直接的な被害者が見えないだけに、見ているこちらもいつの間にか〝バレないように〟と応援してしまう😅
最大の見せ場はタイの高校生たちが大学統一入試で仕掛ける大胆かつ巧妙な集団カンニング。この心拍数が上がりそうなスリル満点の演出を初めて見た時はタイの映画もなかなかやるなと感心した。
公開時に劇場で鑑賞した映画を動画配信にて再視聴。
〈余談ですが〉
受験戦争と言えば日本を遥かに上回る学歴社会の韓国が有名だが、近年タイの受験事情も加熱している。
経済的格差の激しいタイは、意外にも大学への進学率は日本より高く、更に出身大学が給料や昇進に大きな影響を与えている。高い学歴があることが高収入を得る必須条件となっているのだ。
実際、旅行に行って感じるのは家賃の高いバンコク中心部では、ある程度の英語を話せる人が多いが、家賃の安い郊外へ行くと英語を話せる人が少なくなってくるように感じる。
一方国内の大学では入学に際しての賄賂が常態化しており、そのことが更に格差を生む要因となっているという。学校によっては学生の質よりも、どれだけ家がお金を払ってくれるかで選んでいるという。
お金が無い学生はチャンスをもらえない〝貧困から抜け出すためには金が必要〟というなんとも矛盾した悲しい現実もあるようだ。
親が金持ちのエリート層は海外留学を経験し、卒業後は語学力を活かし国外で働くか、外資系の企業に就職することを目指すそうだ。
そうしたエリート層は日本の若者達より、はるかに稼いでいるという。日本が経済的に停滞していたこの30年間でアジアは大きく動いていた。
〈更に余談ですが〉
今回40年振りにタイへ旅行に行って感じたのは日本の経済的地位の相対的な低下だ。
40年前は、地方のマーケットに行っても片言の日本語で話しかけてきたり、日本語の看板を至る所で見かけた記憶がある。
今でももちろん日本語はあるが、それよりも圧倒的に目についたのは中国語の看板だ。駅の案内板もタイ語・英語・中国語で書かれており、日本語を見かけることは相対的に減っていた😢
悲しいかなこれが現実。お金を多く落としてくれる人へサービスするのはどこの国でも当たり前。考えてみれば日本の観光地も中国語と韓国語であふれている。