KATO

バッド・ジーニアス 危険な天才たちのKATOのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

評判につられて思わず鑑賞。
なんだこれ、映像に華やかさはほとんどと言っていいほどにないのに、画面に引き込まれてしまう。

「集団カンニング」を取り扱った本作。いくら優秀だろうと、お金がない市民たちはチャンスを得ることなんかできないものなのだと。タイの状況が垣間見える。勉強するだけならお金はかからないけれど(現在はたくさんの学習方法がある)、教育を受けたいとなるとお金がどうしてもかかってしまう。これは、どこの国でも同じで、アメリカでは教育ローンも問題になっているし。
だから、リンたちが留学をしたい!お金が欲しいと思うのはやっぱり自然のこと。リンがグレースたちにどんな気持ちを持ったのか分からないし、最初はそこまで嫌悪を抱いていたとは思えないけれど……恵まれているのに、と恨めしく思った瞬間はあるのでは。
機会を与えられ、恵まれているのに「俺は何もできない」と口で言って、ただ遊んでいるグレースたちに徐々に苛立ちを抱くようになったのが悲しい。でも、グレースたちは本当に能力がないのかというとそうでもなさそう。電子機器はうまく扱えているし、学習能力がないとは思えない。やるべきことをやらずに、目的を達成したいなんて……これまでどれだけ甘やかされて生きていたのかが分かる。確かにリンたちのような天才にはなれずとも、自分たちの目標を達成できるぐらいの能力は育てられたのでは。
父親がとにかく良かった。なぜ、映画の父親というのはこんなにも素晴らしいのか(もちろん、ろくでなしもいる)。リンが厳格に、愛情をもって育てられたのが分かる。彼女は豊かではないけれど、恵まれた家庭だと思う。でも、社会を斜に構えてみちゃうのは社会情勢によるものか。
どんなラストシーンにつながるのか、歪んだままなのかハラハラしていたけれど……きちんと清算されていて、劇中一番の美しいシーンに繋がったのが素晴らしい。
カンニングシーン、ハラハラが止まらない。悪いことなのに、頑張れー!と手に汗握って応援してしまった。
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