浦切三語

スカイライン-奪還-の浦切三語のレビュー・感想・評価

スカイライン-奪還-(2017年製作の映画)
2.7
前作『スカイライン-征服』が民間人視点のホラーSFだとするなら、本作のジャンルはアクションでしょうか。なんだか『エイリアン』と『エイリアン2』の関係性に近いですが、私個人的に非常に不満です。なんで前作よりこっちの方がスコア高いんだよ!(笑)

物語のクオリティで言うなら、拙いCGと低予算感をバリバリ感じさせる絵面ながら「現実と向き合う」というテーマがしっかりと描かれていた前作の方が良くできています。逆に言うと二作目はテーマもなにもあったもんじゃない。というか「これは誰の、何のための、どういうお話を描こうとしているのか」が全く分からない。その最大の原因は主人公の目的意識が明確化されるタイミングが「めっちゃ遅い」という部分にあります。

この映画は当初、主人公である警察官が個人的に解決すべき問題に「不良息子との関係を修復する」というテーマを掲げています(「異星人の侵略にどう抵抗するのか?」は、あくまで物語全体の結末に関わる問題です)。ところが、それが途中で「赤ん坊を守る」という目的に変わっています。この目的意識が変わるタイミングが遅すぎるのです。致命的です。通常、主人公の目的意識は変えずに進めていくか、変えるとするならそのタイミングは前半の部分(プロットポイント1)に配置するのが脚本術の定石とされています。そして、この映画にもきっちりプロットポイント1が描かれています。それがどこかというと、主人公や息子や他のキャラクターが、あの空母にダイソンされてしまうシーンです。だから、本来ならそこで主人公の目的意識を変えるイベントを配置すべきなのに、なにも用意していない。よって物語を前進させる力が弱く、前半部分が前作のダイジェストでしかなくなっています。主人公が「赤ん坊を守る」目的意識に目覚めるのは映画が始まって40分になろうかというところ。遅すぎ。

それに「赤ん坊を守る」という目的も、具体的にそれってどう行動に起こせばゴールなのか分からないから、全体を通してみると物語の筋道があやふやなんですよね。それに脚本家も途中で気づいたのか、やっぱり最後の方で「赤ん坊を守る」ことから「不良息子との関係を修復する」という部分に戻ってきているわけですけど、コロコロ変わり過ぎなんですよ。どう主人公の感情についていけばいいんだよ。しかも異星人の人格バグを切り札みたいにポンポン使うのも、どーなんでしょ。あれは前作のラストに持ってきたからインパクトがあったわけで、こうも次々に人格バグを切り札的扱いされると異星人側がショボく見えてきてしまうんですよね。

あとはキャラクターの描き方も杜撰ですよね~。なにかちょっとしたハードルを乗り越えさせるだけで良いのに、なんかもう銃をバンバン撃ったり地雷設置したりぐらいのことしかやらないんだもん。あの麻薬密売兄妹って、何のために出てきたの?ただの「戦力補強」でしょ?

古代遺跡をバックにデカイ異星人ロボットバトルがやりたいんだー!とか、シラットvs宇宙生物の格闘対決がやりたいんだーい!とか、なんかそういうのはビンビン伝わってくるんですけどね。それでいいのかよと。前作より予算アップしてやることがそんなボンクラでいいの?もうちょっとお話に責任持ってくれよと思います。これはB級映画の中でも個人的にダメダメな部類です。

良かったのは、まさかあの弩級空母が異星人のワンオペで動いているという衝撃の事実ですね。これには涙ちょちょぎれます。地球侵略をバイトみたいな気軽さで押し付けられでもしたんでしょうか。そう考えると、なんだかあの異星人可哀そうだったなぁ。

あ、あとボヤナ・ノヴァコヴィッチのタンクトップ・おっぱいは最高でした!
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