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愛の殉教者たちのSのレビュー・感想・評価

愛の殉教者たち(1967年製作の映画)
3.9
2018/02/14 シネ・ヌーヴォ

原案・脚本・監督 ヤン・ニェメツ
ニェメツの長編第三作。
台詞を極力排除し、全編音楽と効果音と移動し続ける活動的な映像で3つの物語を描く。
第一章「操作責任者の誘惑」は、街のノイズや人々の靴音が強調され、ジャズと共に夕方から夜にかけての人々の姿が写し出される。冒頭から現実と虚構が入り混じっており、三章全てにこの仕掛けが施されている。

第二章「ナスチェンカの夢」は、あるお屋敷の召使いナスチェンカが主人公。彼女は6人の従者に常に囲まれた美しい歌声の歌手に憧れる。その歌手を演じているのがチェコスロヴァキアの国民的歌手カレル・ゴッド。

第三章「孤児のルドルフの冒険」の主人公ルドルフを演じるのは、ヨゼフ・コニーチェクで『ひなぎく』ではマリエが酔っ払って大騒ぎするレストランで、踊り続けるダンサーを演じていた。

不思議な設定の中で、愛の偶然、愛の儚さ、喪失感が描かれ、三つの短編の主人公たちを「愛の殉教者」(自らの信仰のために命を失ったとみなされる者のこと)と名付けた作者の意図が、静かに浮かび上がるエンディングを迎える。

『ひなぎく』のマリエふたりもワンシーン出演し、『パーティと招待客』の出演者やスタッフも多数参加している。

【チェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグ特集にて鑑賞】
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